はじめに
会社の倒産や人員削減によるリストラなど、やむをえず会社都合での退職を余儀なくされることは、非常に悔しいことですよね。
しかし、長いキャリアを考えたときに、今の辛さは一時の感情にすぎません。
あくまで会社の都合で退職するのであって、あなたは何も悪くないのです。
ただし、退職をしたあとに一定の生活が守られるように対策をとっておくべきでしょう。
そこで着目したいのが、ボーナスの存在。
今回の記事では、会社都合退職でもボーナスを支給してもらう条件や、注意点をまとめています。
法的な観点からの注意事項もご紹介しているので、退職までに期間がある人はぜひ参考にしてください。
【会社都合退職のボーナス支給条件】そもそも会社都合退職とは
そもそも、会社都合退職とは”会社の都合で”退職をすることを指します。
あくまで会社の都合なわけですから、あなたの意思とは関係なく退職をせざるを得ないことです。
例えば、会社が倒産してしまった場合や人員削減によってリストラされた場合などは会社都合退職に該当します。
また、業務上多大な過失をしてしまい、会社から解雇された場合も会社都合退職に分類されます。
あなたに責任がない場合がある一方で、「過失による解雇」というマイナスな退職も該当してしまうので、転職活動には多少なりとも影響が出るでしょう。
会社都合退職によって転職活動をする場合、退職理由を明確に伝えることが大切です。
履歴書の職歴欄に単純に”会社都合による退職”とだけ記載してしまうと、応募先の採用担当者はまず「解雇」「能力不足によるリストラ」など悪い印象を持ってしまいます。
なぜ会社都合で退職するに至ったのか、転職活動においては誤解を与えないことを前提に進めましょう。
自己都合退職との違い
会社都合退職が会社の都合である一方、自己都合退職は自分の意思で退職をすることを指します。
例えば、あなたが別の会社に興味を持って転職をしたい場合は、前の会社を「自己都合退職」することになります。
自己都合退職の場合はまず自分で上長に「退職させてください」と申し出ることから始まります。
そして上長を納得させたら退職届を提出し、会社のスケジュールに則って退職手続きをとることが一般的です。
また、自己都合退職は会社都合退職よりも転職活動でさほど影響が出ません。
自分の意思で退職をすることにネガティブなイメージがないとはいえませんが、少なからず「キャリアアップ」「やりたいこと」といったポジティブワードが採用担当者の頭で思い浮かぶでしょう。
なお、自己都合退職の場合は自分が希望するタイミングで退職できることが一般的であるため、ボーナスをもらってから退職をするのも比較的容易です。
【会社都合退職のボーナス支給条件】条件は就業規則による
会社都合退職をする人の中には「ボーナスがもらえないのでは」と不安になる方も多いことでしょう。
結論からお伝えすると、会社都合退職者がボーナスをもらえる条件は会社ごとの就業規則によって異なります。
あなたの働く会社のボーナスの規定が「基本給連動型賞与」だった場合、基本給に連動して支給されるため、多少業績が悪くてもボーナス支給されることが一般的です。
しかし、「業績連動型賞与」「決算型賞与」の場合はその時期や年度の業績によって支給されるかどうかが異なるため、人員削減を行なっている業績の悪い会社はボーナス支給しないこともあるでしょう。
退職する前に「ボーナスの支給はありますか」と聞くのは気が引けると思うので、できれば先に就業規則を確認しておいてある程度の不安を払拭しておくと良いでしょう。
就業規則の確認事項
退職予定者がボーナスを受け取れるかどうかを就業規則で確認するには、まず「支給日在籍条項」をチェックしてみてください。
この文言があれば、規定のボーナス支給日が存在するため、退職日前に合致さえすればボーナスを受け取ることができます。
ただし、これは自己都合退職者に限るもので、会社都合退職者は該当しないケースがあります。
支給日在籍条項にはさらに細分化された条件が紐づけられているはずなので、小さな文言もチェックしてみてください。
【会社都合退職のボーナス支給条件】そもそもボーナス(賞与)とは
ボーナスとは「賞与」とも呼ばれるもので、会社によっては「特別手当」「決算手当」などと呼称が異なります。
なお、厚生労働省が調査した「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等」によると国内の約7割の企業が待遇として賞与を用意していることがわかりました。
基本的にはどの会社でも賞与の仕組みがあるというわけです。
ただし、業界によって制度や金額に大きく差があります。
電気やガスなどのインフラ業界の一人あたりの平均賞与額は80万円以上である一方、飲食業界は6万円台と微々たるものです。
ボーナスはあくまで会社の利益がプラスになった分を社員に還元する仕組みなので、営業利益率や粗利が高い業界に寄っている傾向にあります。
もし転職先として希望の業界が決まっていない場合、平均給与やボーナス支給額が高い業界に着目してみるのも良いでしょう。
法律上の「賞与」の定義
国内企業の過半数がボーナスの支給制度を設けていますが、ボーナスを支給することは法律で決められたものではありません。
支給をしなくてもとくに会社が咎められることはないのです。
ボーナスはあくまでその会社に大きく利益が出たときに社員に還元するもので、言い換えると会社側の厚意で支給しているものです。
そのため、ボーナスがなかったからといって会社を訴えることはできませんし、法的に咎めることもできないのです。
今までは支給されていても、業績が悪くなって急に支給がストップされることもありますし、大幅な減額をされることもあります。
よほど安定した企業でない限り、働く側はあまり期待しないのがメンタルを安定させるポイントとも言えるでしょう。
会社の業績不振などによる退職者の場合、「ボーナスは出ないもの」と思っておいた方が無難かもしれません。
【会社都合退職のボーナス支給条件】支給されない条件とは
会社都合退職でも自己都合退職でも、今までは支給されていたボーナスが突然支給されなくなるというケースはゼロではありません。
ボーナスはあくまで会社に利益が出た時のプラス分を社員に還元するものですから、業績に応じて支給がされない場合もあります。
さらに、退職者は退職事由によって支給条件に当てはまらない可能性もあります。
ここからご紹介するのは、ボーナスが支給されない3可能性のあるつの条件です。
これからご紹介することを把握しておき、自分が置かれている状況に合致する可能性も考慮しておきましょう。
業績不振の場合
業績不振の場合、当然ながら会社が社員に還元する余力がないため、ボーナスが支給されないことがあります。
とくに会社の賞与のシステムが業績連動型賞与である場合、会社が赤字だとボーナス支給はありません。
退職者も同様です。
自己都合退職・会社都合退職に関わらず、退職日をボーナス支給予定日前にしたとしても、会社の業績が悪ければ当然ボーナスはゼロになります。
ただし、部署ごとの業績連動型をとっている会社の場合はボーナス支給される場合もあります。
会社が多少マイナスでも所属している部署が黒字なら、該当する部署だけは平年通りボーナスを支給することもあります。
懲戒解雇の場合
会社都合退職に分類される懲戒解雇の場合、基本的にはボーナスの支給はありません。
なぜなら、懲戒解雇は個人が会社に大きな損失を出してしまった場合に該当するからです。
社員一人の行動が会社に多大な損失を出してしまえば、当然ながらボーナスという高待遇で還元することはできないのです。
もし懲戒解雇の理由に不当性があり、退職させられる社員に何も思い当たる節がないのなら会社を訴えることはできるかもしれません。
しかしながら、明らかに会社に損失を出した社員ならば「不当解雇だ」と会社を訴えても無効になることでしょう。
支給はされても減額の場合もある
先述した2つの事由のようにボーナスが支給されないことは少なくありませんが、ボーナス支給額がゼロではなく減額されるケースも存在します。
会社の業績不振によって整理解雇をした場合は会社側も社員に後ろめたさや情けを感じるものです。
さらに、ボーナス支給前に退職を告知して社員に訴えられてしまっては、会社側も元も子もありません。
このような場合、多少なりともボーナスを支給した上で退職をしてもらうのが無難ですので、「減額」という形でボーナスを支給することはあります。
【会社都合退職のボーナス支給条件】こんなトラブルに注意
退職とボーナス支給に関するトラブルは、どの会社でもよくある話です。
会社側が頭を抱えてしまうケースもあれば、退職者が損をしてトラブルになるケースもあります。
例えば、以下のようなトラブルはこれから想定されるかもしれないと捉えておくと良いでしょう。
- 賃金不払い…就業規則では明確にボーナス支給が定められているにも関わらず、急に支給をストップするとこれに該当する
- 退職予定者は否応なく減額される規定…就業規則で「ボーナス後支給◯日以内に退職予定の社員は、賞与を◯%減額する」などと定められている場合は減額される可能性がある
- 返還要求…ボーナス支給後に退職をした際に、会社から全額返還を求められた
会社都合退職といえども、双方で納得がいく状態で退職ができれば良いのですが、実際に上記のようなトラブルは発生したケースがあるため気をつけましょう。
もし今後このようなトラブルがあった場合、弁護士などに相談をして解決してもらうのがベストです。
【会社都合退職のボーナス支給条件】賞与額の相場
ボーナスの支給額は会社によって異なりますが、平均的な賞与額は給与のおおよそ1〜2ヶ月分と言われています。
厚生労働省が調査した「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等 表2 令和5年年末賞与の支給状況」によると、令和5年度の一人当たりの平均の賞与金額は395,647円であることがわかりました。
一般的な会社員の平均月給が30万円程度なので、ボーナス支給額は1.5ヶ月分くらいが相場と考えるのが良いでしょう。
ただし、賞与の金額は業界や会社規模などによって大きく異なります。
ボーナスはあくまで会社に利益が出た分を社員に還元するお金であるため、粗利が大きい会社はボーナスも大きく、粗利が小さい会社はボーナスも小さい傾向にあるというわけです。
業種・企業規模によって賞与額に格差がある
ボーナスの平均支給額は、業界や会社規模によって大きな格差が生じています。
例えば、前述の厚労省のデータによれば、金融・保険業の一人あたりの平均ボーナス支給額が60万円程度である一方、飲食サービス業は6万円台と雀の涙程度にとどまります。
さらに、大手企業になればなるほど安定したボーナスを得られる傾向にあり、ベンチャーや中小零細企業はボーナスの制度自体設けていないことも少なくありません。
【会社都合退職のボーナス支給条件】よくある質問
ここからは、会社都合退職者と会社間の退職時のやり取りでよくある質問についてお答えします。
ボーナスに関わることだけではなく、退職手続きに関する法的観点からの疑問にも回答するので、トラブル回避のための参考材料として知っておいてください。
退職時に「ボーナス返せ」と言われた…これって違法?
会社側に違法性がある事象です。
会社はボーナスを設けなければならない法律はない一方、すでに支給したお金の返還を求めることは法的に違法です。
もし運よくボーナスをもらって退職することができてもこのようなことを言われた場合、すぐに専門機関に相談しましょう。
弁護士や労働基準局で相談に乗ってくれます。
万が一の時に備えて、退職に関するやりとりをしたメールや電話のログなどを残しておくことをおすすめします。
会社都合退職の場合、退職希望日は自分で選べる?
会社都合退職の場合、基本的に退職希望日は選べません。
とくに会社の業績不振により複数の社員を整理解雇する場合は、会社の決算期などに合わせて退職予定日が提示されます。
ただし、相談次第で退職日を調整してくれることもあります。
退職者も生活や事情がありますから、よほどのことがない限りは会社側も配慮してくれるでしょう。
もし会社側から提示された退職日が希望と異なっていた場合、人事部にかけ合ってみてはいかがでしょうか。
明確な理由と強い意志を持って相談すれば、なんとか調整してくれるかもしれません。
会社都合退職だと転職が難しいってほんと?
会社都合退職者の場合、転職活動にマイナスな影響を与えることは少なくありません。
なぜなら、会社都合退職を「解雇」「リストラ」などマイナスイメージを持つ採用担当者も多くいるからです。
会社都合退職をした人がそのマイナスイメージを払拭させるには、正当な退職理由を提示することが求められます。
最も重視しておきたいのが、履歴書や職務経歴書で記載する職歴欄です。
「会社都合により退職」とだけでまとめてしまうとマイナスイメージのまま書類選考が進んでしまうので、書ける範囲で退職理由を書きましょう。
「退職推奨」の場合はボーナス支給はある?
退職推奨の場合のボーナス支給条件は、会社の状況によります。
この記事でご紹介した通り、会社の業績が悪いがゆえの退職推奨であり、かつ就業規定にボーナス支給の規定日が設けられているのであれば多少なりともボーナスの支給はあるでしょう。
しかし、業績連動型の場合はボーナス支給がされないことも多くあります。
自分の会社のボーナス支給条件は、就業規定をチェックして確認しておきましょう。
会社都合退職のメリットってある?
会社都合退職の唯一のメリットは、失業保険が最短で受け取れるということです。
失業保険とは、就業していない期間に一定の金額を受け取りながら転職活動ができる雇用保険による手当で、会社都合退職と自己都合退職では支給条件が大きく異なります。
自己都合退職の場合は退職日から約3ヶ月後に支給が開始されますが、自己都合退職の場合は最短7日の待機期間を経ればすぐに支給されます。
支給額は前職の月給のおおよそ6〜7割なので、少ない金額ではありません。
急に退職を余儀なくされてしまった人にとっては、非常にありがたい制度に感じるでしょう。
【会社都合退職のボーナス支給条件】転職活動は早めに行おう
会社都合退職の場合は退職予定日が決められていることが一般的ですから、退職が決まった時点ですぐに転職活動を始めておくのが吉です。
もしボーナスがもらえない状態で退職に至った場合、当面の生活費を貯金や失業保険で補うことになります。
失業保険に関しては過去2年間雇用保険に加入していることが条件ですから、該当しなかった場合は貯金を削ることになるでしょう。
そもそも貯金額自体少ない場合、生活の保証が全くないことになります。
早めに転職先を見つけておき、安定した生活が送れるように対策をとりましょう。
転職活動が早めに必要な理由
平均的な転職活動期間は3ヶ月程度と言われていますが、会社都合退職者の場合は転職活動が難航する場合があるので、3ヶ月以上はかかると思っておいて良いでしょう。
また、転職を成功させるためには様々なプロセスが必要です。
求人案件探しから始まり、履歴書や職務経歴書などのレジュメ作成、面接日程調整や面接準備と対策など、やることは盛りだくさんです。
事前準備をいかに早めに行っているかが、転職先を早く見つけるキーポイントともなるので、思い立ったらすぐ行動しましょう。
転職活動に必要なプロセス
転職活動をより効果的なものにして早めに転職先を見つけるには、以下3つを行っておくことをお勧めします。
- 自己分析
- 企業分析
- 業界分析
これらの3つの分析をすることで、自分のやりたいことや相性の良い会社の見つけ方がわかるようになります。
自分の適性を知るきっかけにもなるので、転職先を早く見つけることができるでしょう。
それぞれのやり方を簡単にまとめるので、ぜひ参考にしてください。
自己分析
自己分析は大手転職サイトで展開している無料のWebツールを使ったり、自分でノートに書き込んだりと、やり方はさまざまです。
最も簡単に進めたいなら無料のWebツールがおすすめですし、自己分析の精度を高めたいなら自分で時間をかけてやるのがおすすめです。
なお、自分で自己分析をする場合は「【転職成功】自己分析とは!超簡単にできるやり方から本格的な方法まで徹底解説」の記事を参考にしてみてください。
企業分析
企業分析は、応募先企業をとことん分析することでその会社の魅力や市場での立ち位置を把握する分析方法です。
企業分析を行うと、表面上ではわからないその会社ならではの特徴が鮮明にわかってきます。
志望動機を作成する上では会社の魅力を伝えることが欠かせませんので、書類選考でも面接対策でも役に立ちます。
企業分析の方法としては、まず応募先企業のホームページを見ることは必須。
さらに、その会社が出ているメディアや出版物を網羅的に読んでみるのも良いでしょう。
応募先企業に関わりのある知り合いがいれば、直接聞いてみるのもおすすめです。
業界分析
業界分析は、応募先企業が属する業界を分析することです。
これはとくに未経験の業界に転職をする際に必ずやっておきたいこと。
業界ならではの専門用語や市場を理解することができるので、面接でとっさに質問された時に円滑な回答ができるでしょう。
業界分析の方法としておすすめなのは、業界のトップ企業が出版している本やビジネス・経済系ニュースサイトでワード検索して記事を読み漁ることです。
網羅的に調べることでその業界の市場が見えてきますし、あなた自身よりその業界に興味が湧くでしょう。
転職活動はエージェントを活用しよう
最短距離で転職を成功させるためにやっておきたいのが、転職エージェントの活用です。
転職エージェントは求職者一人ひとりの特性や思考に適した求人案件を紹介してくれるので、応募先企業とのミスマッチを防ぐことができます。
また、書類選考対策のために履歴書・職務経歴書の添削をしてくれたり、面接対策をサポートしてくれたりもします。
会社都合退職という少なからずマイナスなイメージを持たれる人の場合は転職が難航しがちなため、プロにサポートをしてもらいながら転職活動を進めるのが良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、会社都合退職者がボーナスをもらえるのかを主軸に、退職にまつわるあらゆる条件をご紹介しました。
会社都合退職でも自己都合退職でも、ボーナスがもらえるかは会社の就業規則や業績によります。
ただし、ボーナス支給の対象である会社都合退職者だとしても、会社側とトラブルになる可能性はゼロではありません。
就業規則を確認した上で、少しでも「おかしいな」と感じたら専門機関に相談するなどをして対策をとりましょう。
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