経営者を目指すなら営業経験が役に立つワケ
今営業として活躍している人の中には、「起業してみたい」「社長になりたい」という気持ちを持つ人も多いのではないでしょうか。
営業の仕事をしていると様々な出会いがあり、経営者と接する機会も多いと思います。
特にBtoBの営業は毎日多くの経営者と接しているので、経営者に憧れを持つ人も少なくないでしょう。
実際に営業経験を経てから経営者になる人は多く、成功している確率も高いです。
営業は会社の利益を作る重要な役割なので数字にとても強くなりますし、それが経営ノウハウに活かせて成功しているケースも多くあります。
とくに、中堅レベル以上の営業は既に広い人脈を持っている人や交渉力に長けているため、経営者になるための土台が十分にあると言えるでしょう。
今回のコラムでは、営業出身者が経営者に向いている理由や、経営者になるために必要な営業経験について解説していきます。
経営者の多くは営業経験を積んでいる理由
経営者の多くは、何らかの形で営業経験を持っています。
その理由は、営業で売上を上げることと経営者が利益を上げる仕組みが似ているためです。
必ずしもトップ営業になる必要はありませんが、交渉力やクロージング力が養われるため、どんな業界で起業してもうまくいきやすいのです。
そのノウハウを取り入れるために、多くの経営者は営業経験を積んでいます。
具体的な理由は主に以下4つです。
交渉力が身につくから
何の事業を始めるにも取引先や顧客を拡大していく必要があるので、経営を始めるにあたって最も役に立つスキルは交渉力です。
最初のうちはどんどん契約をとっていかないと、1年も経たずして会社を潰してしまうなんていうことになりかねません。
起業してから取引先や顧客を安定させるためには、営業の仕事と同じ流れで顧客獲得をしていきますが、最終的にクロージングをする時の交渉力が重要です。
具体的には次のような流れで交渉力が役立ちます。
マーケティング
ターゲットとしたい顧客を獲得するために、市場分析やペルソナの設定から行います。
営業の仕事でも、受注率を上げるために最初にターゲットを設定してテレアポやメールDMでアプローチしていたと思いますが、起業してからもこの流れは同じです。
アプローチ
次は、ターゲットにした顧客群に対して一斉にアプローチするフェーズです。
アプローチ方法としてはテレアポやメールDM、FAXDMなどが主流ですが、最近ではSNSを使った集客方法もあります。交渉力は、実はこの段階から役立ちます。
交渉は興味喚起〜クロージングまで計画的に行っていくものなので、「初手の段階でいかに顧客の興味を引きつけられるか」というスキルは交渉力のうちの一つなのです。
課題のヒアリング
アポイントが取れた顧客の課題をヒアリングし「自分の事業のサービスをどのフェーズで入り込ませるか」を考えます。
解決策の提示とクロージング
自分が考えた解決策を提示します。
課題のヒアリングまでできていれば顧客の興味と意欲は高いはずなので、ここで最終的なグリップを握れるかどうかが鍵です。
この最終的な提案の場面で受注できるかは交渉力の強さに左右されます。
泥臭いかもしれませんが、営業の武器である交渉力は経営にとても重要なスキルなのです。
利益が上がる仕組みが理解できるから
営業は会社の利益に直結する仕事なので、「儲かる仕組み」を直に感じやすい環境にあります。
中堅以上の営業だと自分の売る商品の粗利まで理解できるようになりますし、マネジメント経験を持っていれば人件費や予算管理まで総合的なお金の知識を武器にすることができます。
そうした環境で働いてきたので営業出身者は利益を作る行動に対してのハードルが低く、何にでも挑戦がしやすいのです。
とくに、次の業界の営業は利益の仕組みが学びやすい環境です。
人材営業
人材営業は企業の適切な人材配置を提案することにより企業成長を促す仕事です。
種類は求人広告の営業や人材紹介の営業など様々ですが、共通して言えることは「適切な人材配置による事業拡大の仕組みが学べる」ということです。
会社を大きくするためには人の力ありきなので、起業して事業計画を立てる際に人材の育成計画もしやすくなります。
広告営業
広告営業は集客のノウハウが学べる環境です。
起業したての頃はとくに集客スキルとセンスが利益を上げる鍵になるので、広告営業として多種多様な業界の集客を提案してきた営業経験はとても役に立ちます。
金融機関営業
金融機関の営業は企業の財務表や事業計画書に触れる機会がとても多い仕事です。
とくに銀行の融資担当は融資をする際に必ず事業計画書を提出してもらい、融資できる計画かどうかを判断するので、様々な企業の経営計画を目にする機会が多いです。
自分で起業した時に事業計画を立てる際にヒントとなるものが得られるので、財務の知識はとても重要です。
メーカー営業
メーカー営業では商品の売れる仕組みを学ぶことができます。
商品はメーカーで製造して卸業者へ販売し、さらに小売店、消費者へと流れていきます。
この過程でマージンの設定基準や商品がヒットするコツが身につくので、有形商材の事業を立ち上げた場合にはとくに役に立ちます。
マネジメント経験が活かせるから
3つ目の理由は、営業時代のマネジメント経験が経営者になった時の従業員育成に役に立つということです。
会社を大きくさせるためには従業員を採用して育成していくことが必要ですが、最初は少人数でスタートアップ企業として始めると思います。
少人数のチームで利益を上げるためには一人一人の力がとても大きいので、従業員のスキルを向上させながら、モチベーションを上げて急激なスピードで成長させる必要があります。
経営者がマネジメントをして従業員の成長を促進するためには、以下の営業マネジメントの経験が活かせます。
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また、会社が大きくなって新事業を立ち上げるときは、育てた部下の中からリーダーを配置するはずです。
このときにリーダーになった人に対してもマネジメントスキルを養ってもらう必要があるので、自分のマネジメント経験をもって「良いマネージャとは」という根本的なマインドを教えることができます。
人脈を活かせるから
どの業界の営業でもとにかく人脈が広がるため、それを有効的に活用することができます。
例えばBtoBの営業なら経営者とのつながりが増えるので、同業界に参入する時に横のつながりがある状態でスタートできます。
そしてBtoCならスタート時点で既に顧客予備軍がいるという状態になります。
営業の担当顧客数は数十〜数百と多いので、営業で出会った人脈はとても心強いものと言えるでしょう。
参考までに、営業が人脈を広げている背景をシーン別にお伝えします。
新規顧客開拓
営業で新規顧客開拓をする際、テレアポを中心に多くの企業にアプローチすることでしょう。
業界によっては1日200件〜300件のテレアポを実施することもあります。
このように毎日膨大な数の企業にアプローチしていると、自分を認識してくれる顧客も増えてリピーターが増えてきます。
リピーターになった顧客とは長い付き合いをすることになるので、もし自分が起業をした時に応援してくれる可能性も高いです。
会社を退職する際、「こういう事業を始めようと思っている」と報告すると「〇〇さんにならお願いしたい」と言ってくれる顧客も出てくるでしょう。
そうした顧客がいればいるほど、人脈のある状態から起業ができるのでとても楽です。
交流会
業界によっては交流会に参加する機会も多いと思います。
自社の顧客にならなくても、気の合う社長さんがいれば名刺交換やビジネスSNSでつながったりするチャンスが巡ってくる可能性も高いです。
また、最近ではウェビナーと呼ばれるオンライン上のセミナーの開催も増えてきました。
ここでは異業種のビジネスパーソンと関われる機会があり、交流が深まるチャンスもあります。
交流会を重ねるごとに経営者や他社のビジネスパーソンとの知り合いが増えてくるので、起業したときのビジネスチャンスに大きく期待できます。
会食
最近では会食をする営業が減ってきつつありますが、メーカーや保険会社などではまだ営業と取引先の会食が存在します。
会食は自社と取引先の関係性を強化することにより取引を拡大してもらうことですが、同時に人同士の関係性の強化にもつながります。
趣味の話をしたり、プライベートでつながりが持てる機会も増えることでしょう。
もしそのような友好的な関係性のお取引先が増えれば、起業した時にまた別の形で円をいただけるかもしれません。
共同セミナーなどBtoBのタイアップ
代理店営業など取引先と共同で何かをすることが多い営業は、同業他社との交流が増えます。
もし起業した時に今の業界内で事業をスタートするなら、同業界の人とつながっておくことで最新の情報を得ることが可能です。
横のつながりはとても重要です。
営業経験を活かして経営者になるためのステップ
次に、営業経験を活かして経営者になるためのステップを説明します。
先ほどご説明した通り、営業経験を活かすにはある程度の経験を積んでおくことをオススメします。
売れる営業になることはもちろん、マネジメントの経験をしたり、場合によってはキャリアアップ転職も必要です。
経営者として幸先の良いスタートを切るために、以下の4つのステップを経験しておくことを検討してみましょう。
営業として実績を出す
必ずしもナンバーワンでい続ける必要はありませんが、周りから「あの人はトップ営業だよね」と言われる程度までは実績を出しておいた方が良いです。
営業の仕事は誰にでもできるものではありませんが、売れる法則が理解できればたいていの人はトップ営業と言われるまで成長できます。
会社を経営する際にもこの売れる法則は重要で、理解できていない人は安定して利益を作り続けることは難しいでしょう。
また、売れる営業は競合他社に勝ってきた経験も多いです。
経営をしたらもっと激しい競争社会で生き続けることになるので、勝ち続けるための営業知識とポテンシャルがとても役に立ちます。
マネジメントの経験をする
営業としてある程度売れるようになってきたら、チームをまとめる役割を与えられることでしょう。
営業リーダーやマネージャーは、チームで売上目標を達成するだけでなくメンバー一人一人の目標達成にもこだわらなければなりません。
そのためには人材育成のノウハウを学び、一人一人に合った育成方法を提示する必要があります。
会社を経営したとき、従業員を最初に育成するのは経営者です。
会社が小さいうちは一人一人の力量に頼らなければならないので、ベストパフォーマンスを発揮できる人材に成長させるためのノウハウが必要なのです。
目指したい経営者のいる会社に転職する
もし「起業したい」と思ったきっかけが憧れの経営者の影響なのだとしたら、その経営者の会社に転職をすることを視野に入れても良いでしょう。
経営学は机上で学ぶだけではあまり身につきませんが、憧れの経営者がいるのであればその人のもとで経営を学んだ方が知識が身につきやすいです。
独立者を輩出している会社に転職する
老舗の大手企業から今をときめくメガベンチャーなどでは、独立者を多く輩出している企業が存在します。
例えば、楽天やリクルートやサイバーエージェントなどが有名です。
企業として表立って独立支援をしているわけではありませんが、独立者が多い理由は社風や環境にあります。
このような企業の特徴は、社員一人一人の自立性が高く職務に意欲的であるということです。
こうした環境で働くことで個人の自立性と責任感が養われ、独立にも意欲的になります。
既に起業したいという意欲を持っている人が転職した場合は、同じく「起業家」を目指す仲間に出会えることで新たなアイデアが芽生えたり人脈が広がることも期待できます。
経営者に向いている人の特徴
最後に、経営者に向いている人の特徴や性格についてお伝えします。
経営者向きのタイプの人は、次の6つの特徴を持つ人です。
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経営者になるために営業経験や実績はとても役に立つものですが、経営者に最も大事なものはポジティブで行動力のあるマインドを持っていることです。
経営や財務の仕組みについて知識をためていても、持っているだけでは役に立ちません。
ポジティブマインドが行動力を促し、良い経営者として成長させてくれるのです。
起業することに対してまだ自信が持てない人でも、このタイプに少しでも当てはまるようであれば自信を持って経営者を目指してください。
周りを巻き込むことが上手な人
起業をして最初の頃は、経営計画の策定や人材育成計画などの場面ごとに悩みを抱えることでしょう。
そうなった時に誰かに相談したり協力を依頼したりと、周りを巻き込んでいくことで解決できることがたくさんあります。
例えば、始めようとしているプロジェクトの中で自分が関わってきた経験がない分野があったとしたら、誰かに相談して一緒に進めることで計画通りに円滑に進む可能性が高くなります。他社のアイデアを取り入れることで、当初の計画以上の利益を出すことにもつながるかもしれません。
さらに、巻き込み力は経営が安定して人材が増えてきた時にも役立ちます。
会社が大きくなると自分でやらなくても良いタスクが増えてきますが、部下を頼ることができれば経営に集中できますし、部下の成長にもつながります。
確かに経営を始めた頃は自分一人でやらなければならないことは多いです。しかし、自分でしなくても良いことまでこなすことで業務が滞ってしまう可能性もあるので、適度に周りに助けを求められると良いでしょう。
一人でなんでもこなせる経営者は実はとても稀で、成功している経営者の多くは人脈を有効的に使って周りを巻き込んで成長しているのです。
新しいことに順応性のある人
世の中の市場はどの業界においても目まぐるしく変化しています。
市場の変化や新しい技術の登場に応じてユーザーの思考性も変わっていくので、時代についていくためにはそれにいち早く順応していくことが重要です。
とくに最近はITの分野で新しいサービスがどんどん輩出され、世の中の「当たり前」が変わりつつあります。
わかりやすくいうと、例えば広告の分野だとしたら従来は折込広告やウェブサイトのアフィリエイト広告が主流でした。
しかし昨今ではGoogleのAIを駆使したジオターゲティング広告などが当たり前になってきたため、ターゲットとするユーザーのみに広告を配信することができます。
新しい情報を知ることで業務の効率化が図れますし、世の中に求められているニーズに気づいて新しいサービスを始めることもできます。
日々変遷していくトレンドにアンテナを張ることで「時代についていける会社」であり続けることができるので、SNSやビジネス情報誌などで意識的に最新情報を取り入れることが重要です。
楽観的な一面のある人
経営は良い時もあれば悪い時もあり、波がとても激しいことは当たり前ですが、経営者は悪い時でも楽観的に見られるメンタルの強さが必要です。
とはいえ、良い時はとても幸せな気持ちで笑っていられると思いますが、悪い時は落ち込んだり悩んだりして自己嫌悪に陥ってしまうことも多いでしょう。
その心理は人間として当たり前のことですが、経営者はいついかなる時も落ち込んで足踏みしてはいられません。
悪い時にこそすぐ要因分析をして課題解決をする行動力が必要ですが、その行動力は楽観的でポジティブな感情を持てた時にこそ発揮します。
「今はダメだけど、良い時もあったんだから大丈夫」
「良い状態にするためにポジティブアクションを考えよう」
とプラス思考で楽観視できるマインドがあればとても強いです。
どんな分野においても、成功する秘訣は失敗を失敗のまま終わらせないということです。
失敗したからといって悪いことばかり考えてしまうと負のループにはまって良いアイデアが出せなくなるので、何事もプラスにとらえられるとうまくいきます。
忍耐力のある人
起業してから経営が軌道に乗るまでは時間がかかるものです。
まれにビギナーズラックで起業1ヶ月目から大幅な利益が出てしまう人もいますが、大半の場合は安定した利益が出るまでは数ヶ月以上かかります。
法人として立ち上げて融資を受けた場合は、扱う商材にもよりますが黒字になるまで3〜5年かかるとも言われています。
とても長い道を試行錯誤して進んでいかなければならないので、黒字になるまではメンタル面でもフィジカル面でも疲れを感じてしまうことでしょう。
しかしここで足を止めるわけにはいきません。
小さな成功を積み重ねたり失敗したりと、経営における様々な経験をしていくことでマイナスの幅が徐々に縮まってきて、いずれ黒字に近づいてきます。
それまでは我慢強く待つつもりで、今できることに集中してとにかく行動をすることが大事です。
補足|人材を抱えない&無形商材なら早めに利益が出やすい
会社を立ち上げて人材を採用すると、人件費・事務所の家賃・備品など多くの経費がかかります。
それを加味すると、利益が出るかどうか不安定なスタートアップ時期では一人で始める方が得策です。
また、扱う商材を無形商材にしたり場所を問わない働き方の職業の方が安定して利益を出しやすいと言われています。
素早い決断力を持つ人
経営を赤字にしないためには、課題に素早く気づくことが重要です。
「今はうまくいっているけれど、このままいくと来月は危ないかもな」と少しでもうまくいかない気配を感じたら、すぐに要因分析・課題の抽出・解決策を考える必要があります。
もしその解決策が今の計画と違った場合でも、それが利益につながるのであれば素早く軌道修正する必要があります。
このスピードが遅いと、赤字になった時に慌てて事業計画をやり直す羽目になり、解決策までが練りきれなくなるでしょう。
また、うまくいっている時にも素早い決断力はとても重要です。
安定して経営していくためには新しいことにアンテナを張っておくことが重要とお伝えしましたが、それと同時にすぐ行動できる決断力も重要です。
新しいことを取り入れる時に疑いすぎて足踏みしていると、せっかくのチャンスを逃してしまう可能性も高くなります。
何事も見極めることが重要ですが、慎重すぎるとなかなか決断できずに終わってしまうので、時には「やってみよう精神」が重要なのです。
まとめ
今回は、経営者になるために営業経験があると良い背景と、経営に役立つ営業スキルなどを総合的にご紹介しました。
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起業することはとても勇気のいることですが、営業経験のある人はあらゆる場面で営業スキルが役に立ちます。
どの業界で起業するにも、最初は顧客拡大のために営業をしていくことが大半です。
顧客獲得の効率的なプロセスは営業の仕事だからこそ身についているものですから、始めた段階からすぐにスキルを活かせるでしょう。
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