ジョハリの窓とは?行う手順やメリット、注意点まで徹底解説!
はじめに
対人関係に関する書籍やセミナーの中で、「ジョハリの窓(Johari Window)」というワードを目にしたり耳にしたりしたことのある人は多いのではないでしょうか。
ジョハリの窓とは、自己分析を行って他者とのコミュニケーションを円滑に行うためのフレームワークです。
この記事では、ジョハリの窓を行う手順について詳しく解説します。
ジョハリの窓を行うメリットや行う際の注意点についても触れていますので、最後までお読みください。
ジョハリの窓とは
ジョハリの窓とは、1955年にアメリカで行われた「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」の中で、「対人関係における気づきのグラフモデル」として発表されました。
発表者であるサンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト (Joseph Luft) と、ハリ・インガム (Harry Ingham)の名前から「ジョハリの窓」と名付けられました。
ジョハリの窓では、被分析者の性格や認識を、「解放」「盲点」「秘密」「未知」という4つの「窓」に区分し、分析を行います。
被験分析者の自己分析と、周囲による他己分析を統合することで、「解放(自他ともに認知している特性)」を広げ、「未知(自他ともに認知していない特性)」を狭めることで、他者とのコミュニケーションに活かしていく手法です。
ジョハリの窓の20項目
ジョハリの窓では性格を20の項目として設定しており、各項目をそれぞれの窓に振り分けることで、被分析者が認識している性格と、他者から見た認識を確認します。
ジョハリの窓で設定する性格項目は、次のとおりです。
上記は基本的な20項目となっていますが、必ずしもすべてを分析しなくてはならないというものではありません。
分析の目的などに合わせて項目を追加・割愛することも可能です。
ただし、項目が少ない場合は、分析の精度を下げて偏った結果になる可能性があります。
多角的に分析するためにも、基本の20項目は外さない方がいいでしょう。
ジョハリの窓を行う手順
ジョハリの窓を行うには、いくつかの方法があります。
フォーマットを定めず、本人や他人に対する認知を自由に記述していく「自由記述法」、性格項目をあらかじめ選択肢を用意し、被験者に合わせて選択する「選択肢法」、Web上で公開されているアプリなどを利用する「アプリ診断法」などが主なものです。
目的や用途に合わせて行いやすい方法で診断を行うことが可能です。
今回は、初めての人にも分析しやすいように、性格項目を選択肢として設定しておき、被分析者に合わせて選択する「選択肢法」の手順をご紹介します。
人を集める
ジョハリの窓は、自己分析と他己分析を照会し、被分析者の性格を明確にしていくワークです。
そのため、被分析者以外にも分析者が必要となります。
分析者は1名でも可能ですが、分析結果に偏りが出ることも考えられるため、3~4名程度の分析者がいることが望ましいです。
お互いに分析し合い、その結果を知ることにより、「そういった特性もあるのか」と視野を広げるきっかけになります。
ただし、分析者を集めるときには非分析者の上司など、力関係が生じるような立場の人はできるだけ外しましょう。
同じような目的意識があり、忌憚なく意見が交換できるようなメンバーで構成すると、よりパーソナライズされた分析やアドバイスが出てくるので、ワークが意義深いものになります。
4つの窓を準備
ジョハリの窓を行う際に人数分の紙とペン、付箋を用意します。
紙は、参加人数や性格項目数にもよりますが、A4程度の大きさがあるといいでしょう。
1人1枚に用紙を渡したら、中央に大きな十字を書くか、縦に3本の線を引いて、紙面を4つのブロックに区分します。
各ブロックに「解放」「秘密」「盲点」「未知」と書き入れてください。
これが「窓」となります。
中央に十字を書き入れてブロックを作っている場合は、左上から時計回りに記入してください。
「解放」は「自分も他人も認識している性格」、「秘密」は「自分は認知しているが他人は認知していない性格」、「盲点」は「自分は認知していないが他人は認知している性格」、「未知」は「自分も他人も認知していない性格」になります。
被分析者の特徴や性格を書き出す
上記「ジョハリの窓の20項目」で紹介した基本の性格項目の中から、被分析者に当てはまるものを付箋1枚にひとつずつ書き出します。
分析の目的や用途に応じて、基本の性格項目以外に項目を追加したり割愛したりしても問題ありません。
ただし、追加や割愛される項目があることを参加者全員が共通して認識しておくことが必要です。
被分析者自身も、自分に当てはまる性格項目について付箋に書き出します。
付箋を用意するのが面倒な場合は、基本的な性格項目を記載したチェックシートをあらかじめ作成し、参加者全員に配布する方法もあります。
公平で正確な分析を行うためにも付箋やチェックシートは無記名とし、被分析者が誰によって分析された結果なのかわからないように回収を行ってください。
4つの窓に当てはめる
被分析者は、自らの分析結果と分析者より回収した結果の付箋を、4つの窓の当てはまる部分に貼り付けていきます。
貼り付ける方法は以下のとおりです。
被分析者と分析者がともに書いている項目の付箋は「解放」の窓に貼り付けます。
自分は書いていないけれど分析者が書いた項目の付箋を「盲点」の窓に貼り付けます。
被分析者が書いて分析者が書いていない項目の付箋は「秘密」の窓に貼り付け、「解放」「盲点」「秘密」にない項目については、「未知」の窓に書き出すか付箋を作成して貼り付けてください。
最後に、参加者全員で漏れや窓間で重複して貼られていないかを確認しましょう。
参加者が多いほど、付箋の仕分けは大変になりますが、より精度の高い結果につながります。
結果を分析
ここまでの準備が終わったら、いよいよ分析です。
各窓に貼られた付箋をもとに、被分析者の性格を分析していきましょう。
「解放」や「盲点」の窓に貼られている付箋の枚数が多いものは、周囲からその特性が強いと認知されている性格です。
「盲点」や「秘密」に挙げられた項目については、まだ認知されていない被分析者に秘められた特性・魅力となります。
「未知」についても、本人や周囲がまだ認知していないだけで、本当は持ち合わせている性格である可能性があります。
分析後は、このあたりも含めてディスカッションを行って深堀りしていくことで、新たな人間関係の構築やよりよいコミュニケーションづくりが行えるでしょう。
ぜひ活発な意見交換を行ってみてください。
ジョハリの窓のメリット
ここまで、ジョハリの窓の説明や活用するときの具体的な手順について解説してきました。
ジョハリの窓に対する理解が深まり、興味や関心が出てきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
対人関連のセミナーなどでは、ジョハリの窓を取り入れるメリットがあると考えられています。
ここからは、ジョハリの窓を活用することによって得られるメリットを3つ解説します。
ジョハリの窓の取り入れ方に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
自分と周囲の認識とそのズレを洗い出せる
ジョハリの窓は、自己分析と他己分析を同時に行うため、本人が認知している性格と、周りから見た自分の性格を明らかにし、ズレている箇所を特定できます。
本人が当たり前となっていて特性と認識していない部分が、周りから見ると素晴らしい特性と認知されていることもあります。
本人は「頑固」であると短所として捉えている性格が、周囲から見れば「根性がある」など長所として受け止められていることもあるでしょう。
反対に、本人が気づかないところで周りに不快な思いをさせていたり、心配されていたりする部分が明らかになる可能性もあります。
「秘密」の窓に書き出された項目は、「こうありたい」と深層心理で願っている特性かもしれません。
周囲に気づかれていないのであれば、今後一層意識してその特性を活かすようにするといいでしょう。
このように、自分や周囲の認識をすり合わせることで出てきたズレから、それぞれの認識が生まれた背景について考えてみることで、自己認識がさらに深まっていきます。
新たな一面に気づくことができる
「盲点」や「未知」の窓に挙げられた項目は、本人や周囲が気づいていない性格・特性です。
特に「未知」の窓に挙げられた項目については、本人も周囲も気づいていない特性になるため、被分析者には備わっていない特性であると考えるのが一般的です。
しかし、他の性格項目と照らし合わせながらディスカッションを行っているうちに、「そういえば、こういう一面もあるよね」と気づくことがあります。
新たな特性に気づくことができれば、その特性を伸ばしてコミュニケーションに活かすことができます。
人を知らないうちに不快にさせていることも、意識することで回避できるでしょう。
いずれにせよ、周囲からの客観的な視点からの分析を冷静かつ真摯に受け止め、エントリーシートや面接、さらには今後の人間関係に活かすのがおすすめです。
ジョハリの窓を行う際の注意点
ジョハリの窓による客観的な視点からの自己分析は、今後の人間関係構築やコミュニケーションに役に立てることができます。
しかし、あくまでも分析によるひとつの見方であるため、ジョハリの窓による結果がその人のすべてを示すわけではありません。
予想外の結果が出たからといって、落ち込んだり怒ったりする必要はありません。
ジョハリの窓を行う際に注意したいポイントが2つあります。
以下でご紹介しますので、ジョハリの窓を行う際には、頭の片隅にとどめておいてください。
結果が変動する可能性がある
分析は、被分析者と分析者による客観的な視点からの特徴です。
そのため、参加メンバーの心身のコンディションが大きく結果に反映される場合があります。
分析者が体調不良で深く考えていなかったり、たまたま被分析者と喧嘩中で印象が良くないまま参加していたりと、好意的な判断をくだせない状況も考えられます。
ジョハリの窓は参加者の意見の影響が大きいことを理解し、参加者や分析のタイミングによって結果が大きく変わることを知っておきましょう。
ただし、ジョハリの窓の分析はまったく信頼できないわけではありません。
自分の意図しない結果が出たとしても、その分析が参加者やタイミングを変えても出てくるものであれば、それは周囲から見た自分の姿であると受け止める勇気も必要です。
結果を真摯に受け止めすぎない
ジョハリの窓以外でも、心理診断のテストを受けたときに、本人が思ってもいないような結果が出ることがあります。
その際に、「自分はこういった人間だからダメなんだ」とネガティブに受け止めて落ち込んでしまう人もいらっしゃるでしょう。
ジョハリの窓は、分析者が変わることで診断結果が大きく変わる、流動性のある診断です。
たとえどのような結果が出ようとも、「自分の性格にはこういった傾向がある」と参考にする程度にとどめておくことが大切です。
分析結果の中で良かった部分は今後に活かし、悪かった部分は意識してなくすようにするだけで、いい方向に作用していきます。
一回の分析結果が絶対ではないので、あまり重く受け止めすぎないように注意しましょう。
おわりに
今回は、性格診断のひとつであるジョハリの窓について解説してきました。
就職や転職の際のエントリーシートや面談など、わずかな情報で自分を知ってもらうためには、自分自身がまず自分のことを正確に客観的に理解していることが重要です。
ジョハリの窓は被分析者と分析者が互いの意見を出し合い、ズレを修正しながら、自分の性格を正しく判断するために有効な手法です。
一回の診断結果が絶対の分析結果となるわけではないことを十分理解したうえで、今後の人間関係に活かすためにも、ぜひジョハリの窓を試してみてください。
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