退職時に確定申告は必要?税金で損しないための手続きをご紹介
確定申告ってよく聞くけど、実際何をしたらいいかわからない。
そんな方も多いのではないでしょうか。
本記事では、退職時に損しない税金に関する手続きをご紹介していきます。
はじめに
「会社を退職することが決まったけど、税金の手続きってどうしたらいいの?」
「これまでは年末調整を会社にしてもらってて、確定申告のやり方がさっぱりわからない。」
そんな方も多いでしょう。
そこで、本記事では会社を退職した際の確定申告について、初めての方でもわかりやすく解説していきます。
必要書類や書き方、還付がどのくらいもらえるのかという点についても詳しく説明しますので、参考にして税金で損しないための準備を進めていきましょう。
確定申告で得られるメリット・デメリット
確定申告ってめんどくさそう・・・。
一般的にそんなイメージを持ってる方も多いかと思います。
ただ、確定申告を行わなかったことで後悔したり、きちんと行うことで得した気分になったり、ちょっとした知識と行動でその後が大きく変わってくるので、
まずは行った場合のメリットと行わない場合のデメリットについてご紹介します。
確定申告を行うメリット
確定申告を行うことで、次のような利益を得られる可能性があります。
- 納めすぎていた税金の還付が受けられる。
- 国民健康保険料・住民税が安くなる。
給与所得の場合、源泉徴収されてきた所得税に関して、実は必要以上に払っていたというケースはとても多いです。
年末調整を受けていないと、払い過ぎていた所得税は戻ってきませんが、確定申告を行うことで、還付を受けることができます。
また、年度途中に退職し、無収入の期間があったり所得が下がった場合は、確定申告で健康保険料や住民税を安く済ませることも可能です。
確定申告を行わないデメリット
確定申告をする必要があるのに、行わなかった場合や期限に遅れた場合はどんなリスクがあるのでしょうか。
先程、挙げた税金の還付や健康保険料や住民税の減額を受けられないことに加えて、次のような罰則を受けることがあります。
- 無申告加算税:確定申告書を3月15日までに提出しなかった際に、本来納付すべき税に加算される税金(最大20%)
- 延滞税:納税期限である3月15日までに完納しなかった際に、期限の翌日から発生する税金。
2ヶ月以内に完納した場合は、原則年率7.3%で、それ以降は原則年率14.6%。
また、故意に申告書を提出しなかった場合は、懲役刑や罰金刑が課されることもあるので、注意が必要です。
退職後に確定申告が必要な5パターン
ここまでで、確定申告の必要がある場合は、絶対に行わないといけないということは、お分かり頂けたと思いますが、
果たして自分に当てはまるのか?という部分についても解説していきます。
自分に当てはまる場合は、どのような還付が受けられるのかという点もしっかりと押さえていきましょう。
1.その年の年末調整を会社で受けていない
年の途中で退職し、別の職に就いていない場合は、会社で年末調整を受けられないので、確定申告が必要です。
退職するまでに納め過ぎた所得税を確定申告を行うことで、取り戻すことができます。
原則退職の翌年から5年以内に行えば還付を受けることはできますが、後回しにすることのメリットはあまりないので、早めに済ませましょう。
2.12月までに転職したが、転職先で年末調整ができなかった
転職先で年末調整をしてもらう際に前職の源泉徴収票がない場合は、年末調整をしてもらえません。
また、年内に転職先からの給料の支払いがない場合も、年末調整ができない為確定申告が必要になります。
通常は退職1ヶ月以内に前の職場から源泉徴収票が発行されますが、期限を過ぎても手元に届かない場合は、問い合わせて発行してもらいましょう。
3.「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
退職金を受給した場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を前の職場に提出し、源泉徴収してもらう流れになります。
退職金には、退職金控除という税金の計算が行われ、通常の所得税よりも税率が低く制定されているのですが、
申告書を提出しないと、通常の所得扱いで源泉徴収されてしまいます。
そのため、退職金受給において必要以上の税金を払わないためには、
「退職所得の受給に関する申告書」を提出するか、確定申告で差分を還付してもらうという手続きが必要になってくるのです。
4.副業等で年間20万円以上の収入がある
副業等の小さな収入は見逃しがちですが、年間20万円を超えると所得と見なされ、確定申告が必要になります。
見逃してしまい、延滞税や無申告加算税が発生しないように手続きを行いましょう。
5.各種控除を受けたい
確定申告の際に適用できる代表的な控除として次のようなものがあります。
- 基礎控除(最大48万円)
- 配偶者控除(最大38万円)
- 医療費控除(最大200万円控除可能)
- ふるさと納税(寄付金額は総所得額等の40%を上限とする)
- 住宅ローン控除
当てはまりそうなものがあれば、確定申告をすることで控除が適用され、翌年の納める税金額も変わってくるので、忘れないようにしましょう。
詳しくは国税庁のホームページにも記載されているので、是非参考にしてみて下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r05.htm
確定申告の種類
確定申告が必要となったら、青色申告か白色申告かを選択する事になります。
それぞれの違いとどういう基準で選べばいいのかを解説していきます。
青色申告
青色申告は、自営業やフリーランスの方にオススメです。
というのも次のようなメリットやデメリットがあるからです。
メリット
- 最大65万円の特別控除が受けられ、所得から差し引くことが可能。
- 赤字が続いた後に黒字に好転したとしても、3年間は赤字に繰越が可能。
- 家族に対する給与を経費扱いでき、実質的な家庭内のお金が増える。
- 30万円未満のものは、全額経費にでき節税ができる。
- 自宅兼事務所の場合は、家賃や電気代、通信費などを経費として計上可能。
デメリット
- 税務署に「青色申告承認申告書」を提出しないといけない。
- 複式簿記で帳簿をつける必要があり、専門知識が必要になる。
このような条件から、給与所得が大半を締めている会社員の方よりも事業所得がメインの方向けと言えるでしょう。
白色申告
一方、白色申告は次のような理由から会社員等、一時的に確定申告をしないといけない方に適していると言えます。
メリット
- 事前に申請する必要がない。
- 単式簿記という、専門知識がなくても可能な記帳方法なので、申告の手間が少ない。
デメリット
- 青色申告のように、控除等を受けることができない上に、赤字の繰越や家族への給与を経費として扱うことができない。
以上が、青色申告と白色申告の違いとなりますが、
大きく分けると節税したい方は青色申告、手間をかけたくない方は白色申告で確定申告をして頂くことがオススメです。
確定申告の手順
ここまでは、確定申告が必要・確定申告をするとどんな利点があるのかといった内容や確定申告の種類についてご説明してきました。
ここからは、確定申告をいざしようとなった際に困らないための手順や必要な書類等を具体的に解説していきます。
また、ここでは退職者にオススメする白色申告を前提にご紹介します。
確定申告はいつすべき?
確定申告の期限は、基本的に毎年2月16日〜3月15日と設定されています。
国税庁のサイトにも記載されているので、確認して忘れないようにしましょう。
https://www.nta.go.jp/information/other/data/r05/kakushin_kaijo/index.htm
また、近年電子申告納税システム「e-Tax」も普及しており、税務署に行かずとも確定申告が可能になりました。
その際の申請期間は、基本的に書面の場合に比べて1ヶ月以上早い提出が可能です。
必要な書類は?
確定申告書の他にも、状況によって必要な書類が変わってきます。
慌てることなく確定申告を行えるよう、事前に準備しておきましょう。
申告書
確定申告は、前述した通り書面か電子納税システム「e-Tax」のどちらでも行うことが可能です。
紙面で作成する場合は、税務署や確定申告会場、市区町村の担当窓口や指導相談会場でも受け取ることができます。
また、以下の国税庁のサイトからダウンロードして印刷して作成することも可能です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r05.htm
ただ、昨今紙面ではなくe-Taxを利用して作成する方の割合がとても増加しています。
その理由としては、以下の利点が挙げられます。
- スマホ一台で作成可能。
- 添付する資料数が紙面に比べて少ない。
- 申告書の提出後、還付金の受け取りが、書面だと1ヶ月〜1ヶ月半程度かかるのに対し、3週間程度で受け取れる。
- 申告書の控えは、書面の場合原則1つしか受け取れないが、何回でもダウンロードできる。
e-Taxで作成する場合は、以下のページにアクセスし、必要事項を記入していけば自宅でも確定申告が可能です。
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl
申告書以外の書類
申告書の用意ができたら作成に進みますが、退職後の確定申告で必要になる書類は、基本的に次の二つです。
- 給与所得の源泉徴収票(前の職場のもの)
- 国民年金等の控除証明書
ただし、転職したものの源泉徴収票が届かず年末調整ができなかった時には、前述の二つと併せて、転職先の源泉徴収票も必要になります。
また、希望する控除を適用したい場合に関しては、別途で控除証明書が必要になりますが、以下のリンクから必要な控除を検索すると、手続き方法を簡単に検索可能です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/index2.htm
申告書の書き方
それでは、必要な書類が揃ったら早速記入していきましょう。
ここでは特に退職した方向けに確定申告書の書き方をポイントを絞って説明します。
第一表の手順
第一表は、その年の収入の内訳を記入するための重要な部分です。
まず、収入金額の部分には、年間を通して得たすべての収入を記載します。
退職した場合、会社からの給与収入のほか、退職金、副業収入、投資収入など、すべての収入源を確認しましょう。
1.「収入金額等」の「給与」の欄に、源泉徴収票の「支払い金額」を記載する
2.「所得金額等」の「給与」の欄に、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を記載する。
「所得金額等」の「合計」にも同額を記載する。
3.「所得から差し引かれる金額」の欄に、「所得控除の額の合計額」を記載する。
4.「税金の計算」の「源泉徴収税額」の欄に、「源泉徴収税額」を記載する。
さらに、源泉徴収票の中に社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除の記載がある場合は、第一表の同様の欄にその額を記載します。
収入を記入した後は、必要経費の部分に注目しましょう。
事業所得や不動産所得の場合、事業に関連する経費や不動産の維持管理にかかった費用を記入することができます。
第二表の手順
続いて、第二表の書き方について説明します。
第二表は、所得控除の内訳を記入するためのものです。
初めに、基礎控除の部分には、自動的に控除される金額が記載されていますので、特に手を加える必要はありません。
重要なのは、その他の控除項目です。
主な控除項目には次のようなものがあります。
主な控除項目
保険料控除: 支払った生命保険や地震保険の控除対象額を記入します。保険証券や領収書を確認し、正確な金額を記入しましょう。
医療費控除: 年間で10万円以上の医療費を支払った場合、その超過分が控除対象となります。レシートや領収書を集め、合計額を記入します。
寄付金控除: 寄付をした場合、寄付金の一部が控除対象になります。寄付先から受け取る領収書をもとに記入しましょう。
小規模企業共済等掛金控除: 加入している小規模企業共済の掛金があれば、ここに記入します。
雑損控除: 災害などで大きな損害を受けた場合、その損失額の一部が控除対象となります。
これらの項目を正確に記入することで、税金が減額される可能性があります。
特に退職した年は、所得の変動が大きいため、これらの控除を上手に利用することで、納める税金を最小限に抑えることができます。
第一表と第二表共に記入する際は、各項目に必要な書類を用意し、計算間違いがないように注意しましょう。
わからない点があれば、国税庁のホームページを参照するか、税務署に相談するのも良いでしょう。
適切な控除を適用することで、税金の負担を軽減し、退職後の新たなスタートを切るための資金を確保しましょう。
提出方法
確定申告の提出には、主に3つの方法があります。
特に退職した20代から30代の方々にとって、最も便利で時間効率の良い方法を選ぶことが重要です。
e-Taxを使用すると、自宅からでもオンラインで確定申告が可能ですが、マイナンバーカードとカードリーダー、またはIDとパスワードが必要です。
電子申告は迅速かつ簡単で、提出後すぐに受理されるため、忙しい方やデジタルツールに慣れている方におすすめです。
紙の書類で申告を行いたい場合、必要書類を全て揃えて税務署宛に郵送する方法もあります。
書類は国税庁のウェブサイトからダウンロードできますが、書類の到着に時間がかかるため、期限よりも前に送付することが大切です。
対面での確認や相談を希望する場合は、直接税務署に書類を持参する方法があり、申告書の作成支援や疑問点に対する相談サービスを受けることもできます。
退職後の経済面で変化が大きく、申告内容に不安がある場合は、直接専門家のアドバイスを受けられるため安心です。
どの方法を選択するにしても、確定申告の締め切り(通常は2月16日から3月15日まで)に注意し、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
特に退職に伴い、所得状況が複雑になっている場合は、早めに準備を始めることをお勧めします。
不明点や困ったことがあれば、税務署や税理士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
源泉徴収票を紛失してしまったら?
源泉徴収票を紛失してしまった場合、確定申告に必要な重要な情報が不足してしまいますが、解決策はあります。
退職した20代から30代の方々に向けて、具体的な対処法をまとめます。
最も早い方法は、紛失した源泉徴収票の再発行を元の勤務先に依頼することが挙げられます。
多くの企業では、源泉徴収票のデータを保管しているため、再発行が可能です。
連絡する際は、できるだけ早めに行い、必要な手続きや情報を確認しましょう。
元の勤務先から再発行が難しい場合、または勤務先に連絡が取れない場合は、最寄りの税務署に相談しましょう。
税務署では、給与所得者のための「給与所得の源泉徴収票等の写しの交付申請書」を提出し、源泉徴収票の情報を確認することが可能な場合もあります。
再発行や税務署での確認が難しい場合は、自己の記録や給与明細、銀行の入出金記録などをもとに、収入や所得税額を自己申告する方法もあります。
この場合、できるだけ正確な情報を提供することが重要ですが、税務署で内容を確認される場合があるため、誤りがないように注意しましょう。
上記を参考にして、紛失した源泉徴収票によるトラブルを避け、スムーズな確定申告を目指しましょう。
まとめ
本記事では、退職後に確定申告が必要な場合の必要書類や申告書の書き方等をご説明してきました。
適切な手続きを行うことで、税金を適正に納めるだけでなく、可能な限り税金の負担を軽減することができます。
退職金の非課税枠の活用、医療費控除や寄付金控除などの特別控除の利用、そして住民税の調整など、様々な方法があります。
確定申告に不安がある場合は、早めに専門家に相談することが重要です。
適切なアドバイスを受けることで、退職時の税金対策をしっかりと行い、新たなスタートを切るための準備を整えましょう。
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