退職時の有給消化は年度末がお得?有給の仕組みからトラブルへの対処法など詳しく解説
年度末に退職を考えている人で、悩みの種となっている一つが、有給の消化についてではないでしょうか。
これから退職するに当たり、本当に有給を消化して辞められるのか、会社とトラブルにならないかなど、さまざまな不安をお持ちだと思います。
とは言え有給は、働く人全てに与えられた権利であり、自分が好きなタイミングで自由に消化していくことが可能です。
今回は、年度末の退職で考えておきたい有給について詳しく解説します。
年度末に退職するときの有給消化の流れや注意点・ポイント等についても触れていくので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
【年度末退職の有給】年度末退職の有給消化はできる?
結論から言えば、年度末を視野に入れた退職であっても有給消化ができます。
有給休暇は、働く人全てにおいて平等に与えられた権利の一つであって、誰でも利用でき、その目的を伝える必要はありません。
そのために忙しい年度末の時期であっても、タイミングに関係なく有給は利用できるということが基本ルールとしてあります。
なお退職についてですが、年間を通じていつ申し出ても構いませんが、やはり年度末か月末がおすすめです。
会社に勤めている間は社会保険料の半分を会社が負担しますが、退職した月は保険料負担が増加してしまう可能性があります。
そのため月の初めごろに退職をしてしまうと、保険料の負担が悩みの種となってしまうことがあるでしょう。
年度末での退職を目指すなら、前倒しでスケジュールを組み、自身の保有する有給を上手に消化していくことがポイントとなります。
有給消化できる日数がどれくらいあるのかを考えながら、より効率の良い退職が叶うように計画していきましょう。
【年度末退職の有給】有給休暇のルール・仕組み
それでは、少し複雑な有給消化のルール・仕組みについて改めておさらいしておきましょう。
一般的に有給を取得できるのは、次の2つの条件を満たしているときのみです。
- 入社後、6カ月以上が経過している
- 定められた労働日の8割以上出勤している
二つの要件を満たすときに、10日の有給が支給されます。
つまり入社して半年以上勤務を続けていれば、若手社員であっても10日の有給を取得できるようになります。
さらに6年半年以降は1年ごとに20日支給されていく仕組みです。
長く勤めていれば、その分多くの有給が取得できるようになります。
働いた年数が長いほど、次のように有給休暇の付与日数が増えていくということを知っておきましょう。
勤続年数 |
6ヶ月 |
1年6ヶ月 |
2年6ヶ月 |
3年6ヶ月 |
4年6ヶ月 |
5年6ヶ月 |
6年6ヶ月 |
付与日数 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
ただし注意しておきたいのが、有給休暇は有効期限が2年です。
例えば2023年4月1日に入社し、半年働き続けて有給を10日保有したとしましょう。
途中で8日の有給を消化して2025年10月1日を迎えると、残っていた2日分がそのまま無くなってしまうということです。
有給はずっとストックされていくものではなく、時効となってやがて消滅するということを知っておきましょう。
つまり有給の日数は40日が最大となっており、有効期限が過ぎることのないよう上手に消化していくことが重要です。
【年度末退職の有給】年度末に退職するときの有給の消化方法
年度末に退職するときに有給消化するときのパターンは、次の二通りがあります。
- 最終出勤日前に有給を消化していく
- 最終出社日後に有給を消化していく
まとまった有給が残っている人は、以上のパターンのどちらかになると思います。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
最終出勤日前に有給を消化していく
まず最終出勤日前に有給休暇を消化していく方法です。
退職日が最後の出勤となるので、自身のデスク周りを片づけたり社内や取引先に挨拶できたりする時間が作れるというメリットがあります。
また最終出勤日までに、ある程度の出勤日を確保しておけば、有給消化が終わったあとに引継ぎ資料を作成したり後任に情報共有したりも可能です。
もし引継ぎをし切れる自信がないときは、有給消化が始まる前にスケジュールを組んで、しっかりと引継ぎできるようにしておきましょう。
最終出社日後に有給を消化していく
次に最終出社日のあとで有給休暇を消化していく方法です。
有給消化が終わるタイミングで退職扱いとなるので、スケジュールの組みやすさから多くの人がこのパターンで手続きを進めています。
出勤のことを考えなくて良いという理由から、有給消化中に転職活動しやすいという点は大きなメリットでしょう。
最終出勤後なら、有給日数があとどれくらい残っているのかをしっかり確認しておくことが重要です。
また最終出社日に会社へ行くことができないので、引継ぎについても前倒しで早い時期から進めておく必要があります。
【年度末退職の有給】年度末に退職するときの有給消化の流れ
年度末に退職するときの有給消化の流れを紹介します。
- 事前に上司へ相談・報告する
- 年度末から逆算して消化できる有給日数を確認する
- 引継ぎを終わらせるようにスケジュールを組む
事前に上司へ相談・報告する
まずは事前に上司への相談・報告が必要です。
上司へ退職する理由に加え、いつを退職日に考えているか、どのような引継ぎのスケジュールを考えているのかを伝えるようにしましょう。
事前にきっちりと相談・報告ができていれば、周囲の人も年度末に慌てることがないので、スムーズな退職が目指せます。
法律だけで言えば、申し出してから2週間後に退職できるようにはなっていますが、抱える業務や役職等もあり難しいことがあります。
そのため年度末退職を視野に入れるなら、上司へ相談・報告するのは年明け前、遅くても1月ごろには伝えておいた方が良いでしょう。
年度末から逆算して消化できる有給日数を確認する
年度末から逆算して、消化できる有給日数がどれくらいあるのかを確認しましょう。
逆算すれば年末度に有給消化していくシミュレーションができ、いつが最終出勤日になるのかを把握しやすくなるからです。
きちんと計算しないまま退職を目指して動いてしまうと、いざ当日を迎えたときに上手く有給消化できなくなる可能性があります。
繁忙期で絶対に休めない週、比較的余裕ができる週などをスケジュールできっちり管理し、有給を消化していく段取りを確認していきましょう。
ただし就業規則で決められている休日に関しては、有給休暇と見なさないこともあります。
事前に就業規則にも目を通して、必要があれば上司や総務につど確認しましょう。
引継ぎを終わらせるようにスケジュールを組む
きちんと有給消化日数を考慮し、引継ぎを終わらせるように段取りをして、スケジュールを組むようにしましょう。
十分な引継ぎができないままでいると有給を取りづらい雰囲気となってしまい、円満退職が叶わなくなってしまう恐れがあるからです。
業務マニュアルを作成したり、抱えている案件に関して情報共有をしたりと、数年勤務していればさまざまな引継ぎが発生します。
基本的に一日で完了できるものではないので、短くても一週間は引継ぎができる日程を押さえておきましょう。
そしてお世話になった会社へのマナーとして、抜かりなく引継ぎ準備を進めていくことが大切です。
また自身が抱えている取引先がいる場合は、有給消化期間により対応が難しいことを伝え、今後引き継ぐ担当者の氏名を連絡しておきましょう。
【年度末退職の有給】有給消化時に考えられるトラブル・対処法
社会人はさまざまな責任が伴うため、有給消化と言ってもなかなか上手くいかないこともあります。
ここでは次の順に、有給消化時に考えられるトラブルと対処法について見ていきましょう。
- 引継ぎが終わらない
- 有給が利用できない
- 有給が消滅してしまう
- 有給の分の給与が支払われない
引継ぎが終わらない
有給消化に関してよくあるのが、引継ぎが終わらないパターンです。
引継ぎに関するスケジュールが上手く組めていない状況で、退職日が近づくとよく発生するケースだと言えるでしょう。
そのまま後任の担当者が状況を把握できないまま業務に当たると、思わぬトラブルに発展することがあります。
また状況によっては、上司から「引継ぎが終わるまで在籍してほしい」とお願いされて、年度末退職が叶わなくなってしまうことがあるかもしれません。
対処法としては、上司に早めに相談して社内で退職するという情報を共有する、年度末から逆算して引継ぎに関するスケジュールを組むなどがあります。
有給を消化しながら年度末に退職を目指すときは、周囲に迷惑がかからないよう最大限に配慮しましょう。
有給が利用できない
上司に有給消化を断られ、思うように話が進まないこともあります。
「忙しいから休んでもらっては困る」「退職時は有給消化ができない規則になっている」など断られる理由は、人によってさまざまです。
しかしながら有給の消化は、働く人誰しもが平等に与えられた権利ですし、何より2019年からは最低でも年5日の有給休暇取得が義務化されています。
断られてしまった場合は、コンプライアンス部門や法務部など社内の法務関係を取り扱う部署か、加入する労働組合へ相談しましょう。
相談しても話が進まないときは、近隣の労働基準監督署に申し出るようにするのがポイントです。
労働基準監督署へ行けば、有給休暇取得で生じる会社とのトラブルを解決するためのアドバイスをもらえるかもしれません。
しかし労働基準監督署は、社員と会社との間に入って、積極的に仲介をしてくれるというわけではないので注意しましょう。
着手費用はかかりますが、有給未消化の請求をするなら労働問題を取り扱う弁護士に相談するのも一つの手段です。
有給が消滅してしまう
有給を消化できないまま退職をしてしまい、有給が消滅してしまうということも、よく起こりうることです。
このようなトラブルが起こる理由としては「引継ぎが長引いてしまった」「繁忙期で休めなかった」などにより、そのまま退職してしまったというケースが考えられます。
有給を消化するときは、忙しくなる時期や余裕のできる時期を考えながら、上手にスケジュールを組むようにすることが大切です。
ただし上司から「休まないでほしい」など、やむを得えず物理的に有給取得が取れなかったというパターンもあるでしょう。
その場合は有給を買い取ってくれるような会社もあり、消化できなかった有給休暇分の給与を請求する方法がベストです。
有給の分の給与が支払われない
有給の分の給料が支払われないというトラブルも起こります。
有給を消化して年度末に退職したあとに明細を確認して、給与が支払われていないということに気づいたパターンです。
有給を無給扱いにするのは不当な行為であるため、会社に対して書面にて不足額の請求ができます。
請求を拒まれた場合は、あらかじめ証拠を残しておき、最寄りの労働基準監督署へ相談すると良いでしょう。
有給に関する証拠としては、次のようなものが有効です。
- 有給休暇の取得条件を満たしたことが確認できる「雇用契約書」
- 有給休暇の残日数が記載された「給与明細書」「勤怠管理表」
- 有給消化を拒否されたことがわかる音声やメール文章など
証拠を残しておくと労働基準監督署にも相談しやすく、未払いの有給を取り戻すことができるかもしれません。
【年度末退職の有給】年度末に有給を消化するときの注意点・ポイント
「有給を上手に消化しましょう」と言っても、担当する業務量や責任等の理由から年度末退職が難しいケースがあります。
ここでは年度末に有給を消化するときの注意点・ポイントについて見ていきましょう。
- 現職と内定先との二重就労にならないようにする
- 有給休暇消化中に転職活動をする
- 引き留めには冷静に対応する
- 解決が難しい場合は相談する
- 年度末以外での月末退職も視野に入れる
現職と内定先との二重就労にならないようにする
現職と内定先との二重就労にならないように注意が必要です。
二重就労とは、現在の会社に雇用されている状態で、別の会社で働くことを指します。
就業規則で二重就労を禁止している会社は多く、兼業になっていたことが発覚すると、最悪のケースで懲戒解雇を受け、退職金がもらえないおそれもあります。
そのためきっちりと有給を消化して、必ず退職日の翌日以降から次の職場で働くようにしましょう。
現職もしくは内定先のどちらかが二重就労を禁止していないケースだと、その場合はトラブルにはなりません。
ただし2社の会社から雇用されていると、雇用保険の手続きができなくなるおそれがあります。
そのため辞める会社の方へ、雇用保険の資格喪失手続きを依頼するようにしましょう。
有給休暇消化中に転職活動をする
有給消化中の転職活動は問題がないので、できるだけ早く行動に移しましょう。
退職後に空白期間が生まれてしまい、内定が出ないことで精神的な負担となってしまう可能性があるからです。
不安が重なっていけば、時間に余裕があっても、かえって転職活動の効率が落ちるかもしれません。
また収入がなくなってしまう状態により、金銭的な余裕までなくなっていくことが考えられます。
応募書類や交通費、移動中の昼食費など、転職活動は想像以上の費用が発生します。
有給消化中の転職活動であれば、会社に在籍している状態なので収入面での不安がなく、安心して行動できるでしょう。
あらかじめ有給を消化する予定がある月は、転職活動の予定を立てておきましょう。
しっかりと準備しておくことで、効率よく説明会や面接などに参加することが可能です。
引き留めには冷静に対応する
退職を伝えると、上司から引き留められることもありますが、冷静に対応しましょう。
「人手が足りない」「繁忙期に差しかかっている」など、さまざまな理由で引き留められることがあるかもしれません。
しかし退職についても有給と同様に働く人全てに与えられている権利です。
そのため辞めることに後ろめたさを感じる必要はありません。
上司に退職を納得してもらえるようにするためには、引継ぎをきちんと完了させておくことが非常に大切です。
後任の担当者と情報共有ができていれば、必要以上に引き留めされることなく退職を目指せるでしょう。
もし後任が未定なら引継ぎマニュアルなどを作成しておき、誰が引き継いでも業務が理解できるようにしておくことがポイントです。
そして退職する際は、お世話になった会社や取引先に対して感謝の気持ちを忘れないように配慮しましょう。
解決が難しい場合は相談する
有給消化に関して、解決が難しい場合は速やかに相談しましょう。
就業規則のとおりに手続きを済ませようとしても、思うように有給消化ができないこともあります。
まずは直属の上司に相談し、話がまとまらないようであれば、人事権を持つ人事部や法務関係を取り扱う法務部などに相談しましょう。
社内の部署に相談を持ちかけるときは、上司が納得しない理由や状況を正直に伝え、解決してほしい旨を伝えるのがポイントです。
会社全体で有給に対して認識が甘い場合は、労働組合に相談してみるのも一つの手段でしょう。
労働組合であれば、会社に対して団体交渉を申し出てくれて、有給取得の拒否、未払いといった問題に対処してくれることがあります。
ただし会社が要求に応じなければ、団体交渉をもってしても必ず有給問題が解決するとは限りません。
形式だけの組織という位置づけが強い場合、社内の労働組合の場合が意味をなさないというケースも多々あります。
労働組合へ相談しても解決が難しいようであれば、最寄りの労働基準監督署や労働関係に強い弁護士に相談しましょう。
年度末以外での月末退職も視野に入れる
特段こだわりがなければ、年度末以外の退職を検討してみても良いでしょう。
なぜなら年度末以外の退職でも、さまざまなメリットがあるからです。
例えば年度末明けの4月1日に20日の有給休暇が付与される会社もあります。
4月末に退職する予定を立てれば、より多くの休日が手に入り、生まれた時間を転職活動に使えるようになるでしょう。
また6月末や7月末なども、賞与をもらってから退職が目指せるのでおすすめです。
転職先を決めてから退職をしたい人は、求人のピークが来る10月ごろを転職活動にあてて、12月末の退職を目指すのも良いでしょう。
年度末以外でもさまざまなメリットがあるため、現在の時期と状況も踏まえながら他の選択肢がないのかを考えて、退職を慎重に判断することが大切です。
【年度末退職の有給】年度末の有給に関するQ&A
最後に年度末有給の有給に関するQ&Aを、次のとおりまとめました。
- 有給休暇の買い取りはある?
- 有給消化中のボーナス支給はある?
- 有給取得を拒否されたらどうする?
年度末の有給に関するQ&A
これから退職を考えている人は、こちらも参考にしてみてください。
有給休暇の買い取りはある?
有給休暇の買い取りは原則NGとされています。
有給に関しては働く人にリフレッシュしてもらうことを目的としており、制度の一つという位置づけをしている会社がほとんどだからです。
そのため休暇をさせないまま有給を買い取ってしまうと、有給の目的に反したものとなってしまい、会社としては都合の悪いものとなってしまいます。
しかしながら、例外的に有給の買い取りを認めている場合もあります。
例えば退職時に未消化になってしまった場合や、労働基準法の規制を上回って付与された有給がある場合などです。
また時効となり消滅した有給がある場合も、買い取りの対象となるケースがあります。
いずれの場合も退職する側に不利益が生じることはないので、買い取りができそうなら申し出すると良いでしょう。
ただし有休の買取を依頼するときは、事前に就業規則に目を通し、有給に関する規定を確認しておくようにするのがポイントです。
有給消化中のボーナス支給はある?
有給消化中も勤務に含まれるので、ボーナスが支給されます。
ただしボーナスに関しては業績に対する評価によって額が異なるため、有給という理由から減額されてしまう可能性はゼロではありません。
ボーナス支給時に退職が決まっている場合には、会社の都合で減額となる可能性があることは知っておきましょう。
有給取得を拒否されたらどうする?
有給取得を拒否されたら、他部署や労働組合、労働基準監督署に相談しましょう。
会社側が有給取得を拒否することはできず、違反すると労働基準法違反に該当します。
ただし時季変更権を行使した場合は例外です。
時季変更権とは、雇用主が有給取得の時季を変更できる権利のことを指します。
「専門的な業務があり他の人では任せられない」「間に合いそうにない納品日が迫っている」といった事情があれば、雇用主は時季変更権の行使が可能です。
時季変更権は、他の時季に有給が取得できるということなので、年度末退職を視野に入れている場合は、必ず事前に相談しておきましょう。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
退職すると、その月の保険料負担が増加する可能性があるので、できれば年度末もしくは月末の退職が望ましいでしょう。
そして辞めるときに多くの人を悩ませるであろう問題が、有給の消化についてです。
保有する有給を全て消化していくには、退職日から逆算してスケジュールを組んでいくようにしましょう。
また会社に迷惑がかからないように、引継ぎについてもきっちりと終わらせておくことが大切です。
もし会社から有給の取得を拒否されることがあれば、それは労働基準法違反となります。
泣き寝入りせずに、毅然とした態度でしかるべき対応を取っていきましょう。
今回の記事が、転職活動を考えている方の参考になれば幸いです。
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