昨今、新しい形のクライアントワークとしてメジャーになってきている職業に「カスタマーサクセス(CS」と呼ばれるものがあります。
転職活動中で営業職などクライアントワークを探している人は、この職業を目にする機会が多いのではないでしょうか。
今回の記事では、カスタマーサクセスの定義や仕事内容、導入している企業、転職成功へのステップなどを網羅的に解説しています。
転職先の一つとして検討している人は、ぜひ参考にしてください。
【CSを導入している企業】カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、マーケティング戦略の中でも、企業が行っている顧客の成功を支援するサポート全般です。
文字通り顧客の成功体験を実現させる取り組み自体を指します。
サブスクリプション型のサービスを提供しているIT企業などでは、顧客に継続的に利用していただけるようにフォローするのがカスタマーサクセスの役割です。
近年注目を浴び、重要視され始めた背景には何があるのでしょうか。
カスタマーサクセスの内容・目的・役割をチェックしておきましょう。
仕事内容
カスタマーサクセスを導入するにあたって、主な業務内容は大きく分けて4つに分類できます。
既存および新規顧客に関するデータ管理や分析・顧客および社内での対応・導入サポート・コミュニティー運営です。
最も大事な業務が、顧客情報を効果的に分析するためにデータを集約すること。
データを一元管理することで、顧客の成功に必要な課題解決を最適なタイミングで行うことが可能です。
さらに、顧客との信頼関係構築はもちろん、社内でのカスタマーサクセスに関する重要度の認識を高めなければなりません。
他にも、自社商材の導入サポートやコミュニティー運営など、業務内容は多岐にわたります。
目的
カスタマーサクセスの主な目的には、顧客満足度の向上・解約率の低下・既存顧客の契約単価増加などがあります。
企業にとって特に大切なのが、継続的にサービスを利用してもらえること。
昨今、さまざまな業界で普及しているサブスクリプションサービスは、契約期間が決まっていることが一般的です。
契約期間中であっても、自由に解約可能と規定しているサービスも多くあります。
顧客にとっては利用しやすい一方で、企業側にとってはいつ解約されるか分からないリスクを抱えています。
顧客満足度を向上し、解約率の低下につなげることがカスタマーサクセスの目的です。
加えて、既存顧客一人当たりの契約単価がアップすれば、新規顧客の獲得に依存しなくても、企業の売上拡大につながります。
役割
現在、業界・業種を問わず、さまざまな分野での技術が日々進歩しています。
これまで利用してきた商品・サービスよりもさらに優れたものが開発されている現状です。
個人であれ企業であれ、各クライアントはニーズに応えてくれる商材を求めています。
そのようなクライアントの気持ちをくみ、課題を解決し、成功できるようサポートするのがカスタマーサクセスの主な役割です。
カスタマーサポートが全力でフォローし続けた先には、クライアントが成功体験を通して満足度を味わえ、結果的に企業に対する信頼が増します。
そうして企業側は自社商材を長期間継続的に使用してもらえる流れが生まれ、利益拡大につながる優れたマーケティング戦略が成功するというわけです。
そのため、カスタマーサクセスに関する理解を深め、その役割が正しく発揮されることが重要なポイントです。
重要視される理由
カスタマーサクセスが国内にも広まり、重要視されるようになった背景は、サブスクリプションサービスの普及やSaaSの拡大といわれています。
従来は、顧客に対して自社の商材を販売するのがマーケティングの主な目的とされていました。
しかし、新しいサービス体系や技術の開発により、近年は商材の販売後がスタートとの見方が主流です。
さらに、日本では年々人口が減少しており、新規顧客を獲得するのが以前と比べて難しくなってきました。
そのような背景もあり、既存顧客の成功を助け、信頼関係を構築するのに役立つカスタマーサクセスが重要視されています。
SaaS以外でも必要な理由
新しいビジネスモデルの確立や顧客のニーズが目まぐるしく変化している昨今であっても、カスタマーサクセスは自社には関係がないと考えている企業も少なくありません。
「カスタマーサクセス=デジタルサービスを提供しているSaaS企業のみ必要」と偏見を持つ経営者もまだまだ多いのです。
しかし、カスタマーサクセスの必要性は業界・業種を問いません。
顧客の満足度を向上させ成功に導く役割があるため、あらゆる業種で重要です。
例えば専門商社など。
継続的に担当店舗へモノを販売し続けることで自社の利益を守り続ける必要がありますが、従来は営業自ら足を運んでいたところ、CSを導入することで営業効率は格段にアップするでしょう。
常に顧客が求める課題やニーズを見極め、価値ある商材を提供し続けたいとの気持ちが強い企業では、カスタマーサクセスは大きな働きをします。
サブスクリプションサービスやSaaSを扱っていない企業でも、顧客の満足度やリピート率は会社の財務状況を左右する指標です。
ビジネスの世界では、あらゆる業種でカスタマーサクセスが重要といっても過言ではありません。
【CSを導入している企業】カスタマーサクセスの仕事内容
ここからはカスタマーサクセスの具体的な仕事内容について解説します。
以下でご紹介するのは、カスタマーサクセスを導入しているほとんどの企業で重要性が高く、カスタマーサクセスの軸と呼べる仕事内容です。
具体的な業務内容は顧客や事業内容次第で変わっていきますが、先述した役割や目的とも共通する部分になるのでチェックしておきましょう。
サービスの導入をサポート
新しい顧客獲得のためにサービス導入のサポートをすることも、カスタマーサクセスの仕事です。
一般的にはフィールドセールスが新規開拓を行い、見込み顧客となったらカスタマーサクセスが導入までのサポートを引き継ぎます。
顧客を成功に導き、企業の利益につなげるためには、まずサービスを使ってもらわなければいけません。
サービスの導入手順や事前準備が複雑だと、顧客は混乱しサービス使用以前に悪い印象を持ってしまう可能性があります。
また、場合によってはサービスの導入を諦めてしまうこともあるでしょう。
そのため、顧客のサービス導入をサポートすることは、カスタマーサクセスにおける重要な第一歩となるのです。
受動型のカスタマーサービスでは、サービスの導入は基本的に顧客が行うことを前提としているため、企業側は要求された疑問点に対して回答する形で対応していくことになります。
一方カスタマーサクセスでは、顧客の内部事情や企業形態を加味したうえで、より能動的に顧客に合わせた誘導やアドバイスを行わなければいけません。
この段階では、少し営業寄りな見方でクライアントをフォローする必要があります。
オンボーディング
サービスの導入が終わった後に行われる重要なフェーズが「オンボーディング」です。
オンボーディングとは船や飛行機などに乗ることを指す「オンボード」から派生した用語であり、乗員が船や飛行機に慣れるように、顧客にサービスや製品に慣れてもらうことを意味しています。
サービスの導入がうまくいったとしても、使用する過程で新たな問題が浮上してくるケースは少なくありません。
効率的な使い方やサービスの強みが理解できなければ、顧客がサービスを解約してしまう場合もあるでしょう。
顧客満足度が悪化し解約するリスクを下げるために、使い方などのサポートを行うプロセスがオンボーディングなのです。
顧客がある程度慣れるまでには、顧客と積極的にミーティングや情報交換を行い、サービスの必要性を伝えていくことが必要です。
契約継続の促進
企業が安定した利益を出すためには、CACを回収することが重要な課題となります。
CAC(Customer Acquisition Cost)とは、顧客を獲得するためのコストのことであり、これが回収できなければ収益は安定しません。
しかし、CACを回収するためにはある程度の期間がかかります。
そのため、サービスの継続利用や製品の継続使用を促すことが、企業の利益につながる重要なポイントとなるのです。
また、カスタマーサクセスを導入し継続利用を促すことで、LTVも向上します。
LTV(Life Time Value)は、「顧客生涯価値」のことであり、特定の顧客から計画期間中に得られた利益を指す数値です。
既存顧客からの収益を上げることは新規開拓よりも容易なため、解約率を低水準に抑えることが重視されています。
プロダクトフィードバック
サービスの導入サポートとオンボーディングが完了し、顧客の契約が継続している場合でも油断はできません。
なぜなら、顧客はそのサービスを使い続ける条件として「費用対効果」を求めているからです。
いくら安定したサポートを続けていても、かけた分の費用に対する成果が得られなければ解約のリスクは上がります。
さらに、競合他社のサービス向上や市場の変化があれば、状況は容易に変わってしまうでしょう。
そこで重要になるのが、プロダクトフィードバックによるサービスの向上です。
カスタマーサクセスでは、ここまでの過程で顧客から得た意見をもとに現状の課題を考え、製品やサービスを向上させていかなくてはいけません。
そのためにはヒアリングシートの活用や、定期的なミーティングなど、より能動的に情報を集める活動が重要になるでしょう。
プロダクトフィードバックの結果として生まれた新たな製品やサービスを提供し、プロセスを繰り返していくことで、企業の利益や顧客の成功体験という結果が得られるのです。
【CSを導入している企業】国内外の市場
世界の企業の中でもカスタマーサクセスを導入しているのは、アメリカなどIT先進国が目立ちます。
国内だと海外市場に参入しているSaaS系企業などが多いでしょう。
グローバル展開においてカスタマーサクセスが重要である理由はいくつかあります。
まず、海外市場において顧客のニーズや要求が国内市場と異なるためです。
海外市場においても顧客に最適なサービスを提供することが必要なため、市場に合わせたサポートを設置しているのです。
また、グローバル展開する企業は海外市場での競合相手が多いため、顧客ロイヤルティを高め、競合優位性を確保するためにも、カスタマーサクセスが重要です。
さらに、グローバル展開においては文化や言語の違い、法規制の差異、ビジネスプロトコルの違いなど、海外市場との接点であるカスタマーサポートにおいては高度なスキルや知識が求められます。
そのため、グローバル展開を行う企業にとって、海外市場におけるカスタマーサクセス戦略を適切に策定し、運用することが不可欠となっています。
以上のように、グローバル展開においてカスタマーサクセスは重要な役割を果たし、顧客ロイヤルティを高め、競争力を強化することにつながるのです。
国内市場におけるカスタマーサクセスの現状
国内市場におけるカスタマーサクセスの現状は、企業や業界によって異なりますが、以下のようなトレンドが見られます。
①デジタル化:国内市場においては、デジタル化による顧客との接点が増加しています。
顧客が自由に情報を入手できる環境であるため、顧客にとって魅力的なサービスを提供することが求められます。
②CX(カスタマーエクスペリエンス)の重視:国内市場においては、商品やサービスだけでなく、それらを提供する企業自体のブランドイメージやカスタマーエクスペリエンスも重視されます。
そのため、カスタマーサポートやアフターサポートにおいても、顧客中心主義を徹底することが求められます。
③AI技術の活用:国内市場においても、AI技術を活用したカスタマーサポートが普及しています。
チャットボットや自動応答システムによるカスタマーサポートが増加し、24時間365日対応のカスタマーサポートが実現されています。
④プロアクティブなアプローチ:国内市場においては、顧客が抱える問題に迅速に対応するだけでなく、顧客が抱える課題を先回りして解決することが求められます。
そのため、顧客が抱える問題や課題に対して積極的にアプローチし、提案することが必要です。
これらのトレンドに対応するためには、カスタマーサポート体制を強化することが必要です。
特に、顧客ニーズに合わせたカスタマーエクスペリエンスの提供や、プロアクティブなアプローチによる顧客満足度の向上が求められます。
また、AI技術やデータ分析を活用することで、カスタマーサポートの効率化やサービスの質の向上を実現することも重要です。
海外市場におけるカスタマーサクセスの現状
海外市場におけるカスタマーサクセスの現状も国内市場と共通している点が多いですが、具体的には以下のようなトレンドが見られます。
①オムニチャネル化:海外市場においては、様々なコミュニケーションチャネルを活用するオムニチャネルのカスタマーサポートが求められています。
電話やメール、チャット、SNSなど、顧客が利用しやすいコミュニケーション手段を用意することが重要です。
②AI技術の活用:海外市場においては、AI技術を活用した自動応答やチャットボットによるカスタマーサポートが普及しています。
24時間対応のカスタマーサポートが求められる海外市場では、AI技術を活用することで、迅速かつ効率的に問題解決ができます。
③ローカライゼーション:海外市場においては、現地の文化や言語、法規制に合わせたカスタマーサポートが必要とされています。
現地のスタッフを雇用し、ローカライゼーションを実施することで、顧客とのコミュニケーションをスムーズに行うことができます。
④カスタマーエクスペリエンスの重視:海外市場においては、顧客が抱える問題に迅速かつ適切に対応するだけでなく、顧客が抱える課題を解決するための提案を行うことが求められます。
顧客のニーズに合わせたカスタマーエクスペリエンスを提供することで、顧客ロイヤルティの向上につなげることができます。
これらのトレンドに対応するためには、グローバル展開におけるカスタマーサポート戦略を見直し、現地の文化や言語、法規制に合わせたサービスを提供することが重要です。
また、顧客とのコミュニケーションをスムーズに行うために、現地のスタッフに対するトレーニングや教育の充実も求められます。
【CSを導入している企業】メリット・デメリット
次に、カスタマーサクセスを導入することで生じる具体的なメリットやデメリットを確認していきましょう。
最終的な目標だけでなく、副次的なメリットや過程で生じるデメリットを把握しておくことで、カスタマーサクセスの導入についてより適切な判断が可能になるでしょう。
メリット
カスタマーサクセスの導入によって顧客の成功と自社の成功という明確なメリットが得られるのは、先述したとおりです。
そのため、ここからはより具体的なメリット及び副次的なメリットについてご紹介します。
現場で実感しやすいメリットや数字に出やすいメリットについて、しっかり把握しておきましょう。
お客様の声を聞ける
カスタマーサクセスでは、定期ミーティングなどを通じて持続的に顧客にアプローチすることが求められます。
カスタマーサービスだけを行っている企業に比べ、能動的に顧客と関わることになり、そのため「○○サービスを使って本当に良かった」といったお客様の声をより効率的に集めることが可能です。
また、契約継続やプロダクトフィードバックといった目標が設定されているため、集める情報の種類にもしっかりとした軸が作られます。
企業はカスタマーサクセスを導入することで、顧客から得られる情報の量・質に大きな変化が見られることでしょう。
解約率を下げられる
カスタマーサクセスにおいては、顧客を成功に導くために「いかに契約を継続してもらうか」が重要な課題として設定されています。
言い換えれば「どれだけ解約率を下げられるか」ということです。
解約率自体は、導入した顧客数と解約した顧客数から算出できますが、カスタマーサクセスにおいてはカスタマーチャーンやレベニューチャーンといったより踏み込んだ視点で分析を行います。
そのため、企業がカスタマーサクセスを導入することにより、将来的な解約のリスクをある程度予測することが可能になります。
また、解約率を下げることに関する包括的なノウハウが企業に蓄積されるため、新規サービスなどを立ち上げた際にも解約率の見通しが立てやすくなるでしょう。
ブランドを好きになってもらえる
顧客との交渉は、単に情報を収集するためだけの場ではなく、同時に企業側から製品やサービスをアピールするチャンスでもあります。
継続的に交渉を行いつつ、定期的なオンボーディングによってサポートすることで、自社のブランドに良い印象を抱いてもらうことも可能でしょう。
能動的なサポートとコミュニケーションは、顧客満足度を上げる要素となります。
顧客から一定の評価を受けることは、製品やサービスのブランディングにつながるほか、収益の増加も叶います。
いわゆる「ファン」を増やすことで、安定して顧客拡大を図り、会社の利益が増大し続けるのです。
デメリット
カスタマーサクセスの導入によって得られるメリットがある一方、少なからずデメリットも存在します。
これらのデメリットを正確に理解せずカスタマーサクセスを導入すると、成果が出る前に中断せざるを得ない事態も起こるでしょう。
場合によっては、逆に自社や顧客にとっての損害が生じる可能性もあります。
転職を検討している人は、就業後に備えて心得ておきたいこととして知っておきましょう。
成果が出ないことがある
カスタマーサクセスを導入した企業全てがすぐに成果を上げているわけではありません。
カスタマーサクセスは、導入のサポートやオンボーディング、契約率の維持、フィードバックといったプロセスを継続して顧客の成功体験と自社の利益向上を実現します。
そのため、導入後短期間で成果が出るというものではないのです。
また、能動的かつ継続的なアプローチが必要とされるため、受け身のサポートだけを実施するよりも多くのコストがかかります。
さらに、情報収集の方法やフィードバックの方法が間違っていると、いくら継続しても成果が出ない場合もあるでしょう。
カスタマーサクセス自体が比較的新しい概念なので、業種によっては明確なメソッドが確立されていない場合もあります。
カスタマーサクセスを導入する際には、コストの大きさや一定のリスクについてもしっかり把握しておかなければいけません。
仕事が大変
これから転職を検討している人は必ず覚悟しておきたいのが、精神面である程度タフさが必要であるということです。
クライアントワークである以上、仕事は決して楽ではありません。
カスタマーサクセスは、カスタマーサービス以上に顧客と積極的に関わる仕事です。
顧客からの意見は好意的なものだけではなく、状況によっては怒りや悪感情をぶつけられる場合もあります。
疑問や不満に対応し続けることは、精神的な負担につながるでしょう。
また、顧客から得た情報を担当する部署に伝達し、その返答をさらに顧客に伝えるため、営業職的な板挟みの状況も生まれます。
カスタマーサクセスの仕事は簡単なものではなく、適性と能力がある人材に任せる必要があるのです。
【CSを導入している企業】向いている人の特徴
カスタマーサクセスは求められる目標や専門性の高さから、向いている人・向いていない人の性格的特徴が大きく分かれます。
ここからは、カスタマーサクセスとして成功しやすい人の性格的な特徴をご紹介します。
いずれもビジネスパーソンとして重要なものばかりですが、カスタマーサクセスにおいては特に高水準で求められるので、自身の適性を考える際の指標にしてください。
コミュニケーション能力が高い
顧客と積極的に交流を持つカスタマーサクセスにおいて、コミュニケーション能力は必要不可欠なスキルです。
ここでいうコミュニケーション能力とは、単純に話すのがうまいということではありません。
顧客をサポートし、意見や不満を収集することが重要なカスタマーサクセスにおいては、自分から話すだけでなく相手の話を引き出す力も重要になるでしょう。
表には出ていないニーズを引き出すために、質問の仕方や相手の信頼を寄せるためのテクニック的な話法も必要です。
また、コミュニケーションの手段も通話やミーティング、アンケートなどさまざまです。
そのため、前提として積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢を持たなくてはいけません。
臨機応変な対応ができる
カスタマーサクセスでは、顧客の状況や要望に応じて多種多様なサポートを行います。
サポート内容や形態は顧客によって変わるので、マニュアルやテンプレートに従うだけではなく相手に合わせて機転をきかせながら対応しなくてはいけません。
そのため、カスタマーサクセスには自身のやるべきことをしっかりと理解しつつ、型にとらわれない臨機応変さが必要です。
また、柔軟な対応を行うためには、相手の状況や要望を把握するコミュニケーション能力、観察力などもあると良いでしょう。
クレームやトラブル対応においては、初動の対応次第で顧客の印象が大きく変わるケースもあります。
解約率を下げ、顧客に満足してもらうためにも、クレームやトラブルへの対応力は身に付けておかなくてはいけません。
知識を学び続けることが好き
カスタマーサクセスは顧客が悩んでいることや理解できていないことに対して、その理解度に合わせて柔軟にサポートしなければなりません。
そのため、社内の誰よりもサービスについて知っている必要があります。
定期的なミーティングを重ねながら行うカスタマーサクセスの仕事は、顧客から質問を受ける機会も多く存在します。
顧客からの質問に適切に答えるには、豊富な知識を身に付けておかなくてはいけません。
知識の薄さが露呈してしまうと、担当者個人だけでなくサービスや企業そのものに対する信頼度が低下し、顧客満足度の低下につながる可能性もあります。
自社の製品やサービスに関する知識はもちろんのこと、競合他社のサービスや業界の動きに関する知識も重要です。
常にアンテナを広く張り、さまざま知識を蓄えておく必要があるでしょう。
カスタマーサクセス導入している企業10選
カスタマーサクセスを導入している企業はIT業界にかかわらず、多種多様な業界で存在します。
特に国内では大手企業を中心にカスタマーサクセスを導入しているようです。
ここからは、カスタマーサクセスを導入している有名企業を10社ご紹介します。
転職先として大手企業を狙っている人は、各社にどのようなカスタマーサクセスが求められているかも参考にご覧ください。
Smart HR
Smart HRは、クラウドシステムにより人事・労務業務の効率化を図り、人事データ一元管理するソフトを提供していることで知られています。
データ活用により、労働者全ての生産性向上を支え、組織改善の実現も可能。
企業のDX推進には欠かせないサービスを提供しています。
カスタマーサクセスの役割は、ユーザーのニーズを正確に見極め素早く応えられる体制を整えておくこと。
精度が高いチャットによるオンラインサポートや選任担当者訪問によるオフラインサポートに対応しています。
効率的に細分化したサポートチーム体制が特徴です。
ユーザー限定で充実したコミュニティーやイベントを運営しています。
各企業の人事・労務担当者同士で交流可能なため、必要な情報交換が可能です。
設定方法から機能の使い方に至るまで、動画で分かりやすく解説しています。
サービス利用継続率99%の数字から、顧客満足度が高いことが分かるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスに求められる知識や対応力も、ハードルが高いと言えます。
花王
どの世代にもなじみがある花王は、化粧品や医薬部外品などを製造販売するメーカー。
エンドユーザーは一般消費者である個人のため、不特定多数の顧客に対して工夫を凝らしたカスタマーサクセスを実施しています。
例えば、ユーザーとコミュニケーションを図るために活用しているのがLINEです。
LINEの友達追加をしたユーザーに対して、スキンケアやお肌の手入れ方法など、ユーザーに役立つ情報やアドバイスを定期的に発信しています。
数多くの情報を発信していく中で、顧客はパーソナライズした情報を得ることが可能です。
不特定多数の顧客へのカスタマーサクセスは難しいのではないかと危惧しているのであれば、花王の事例を参考にしてみましょう。
Netflix
近年普及してきたサブスクリプションモデルの中でも知名度が高いサービスとして、動画配信サービスのNetflixを挙げる人は多くいます。
ソリューション型サービスではないため、顧客の声が届きにくく、顧客の課題を見極めるのが難しいイメージがあるサービスです。
それでも高い顧客満足度を誇るNetflixでは、工夫してカスタマーサクセスを導入しています。
例えば、ユーザーの視聴データ蓄積により、レコメンド精度の向上に努める方法です。
蓄積しているデータには、どの番組をどのくらいの時間視聴したか、どのようなシーンで視聴を中止したのかなどが含まれます。
データの量は膨大になるものの、ユーザー一人一人に合わせた視聴スタイルや興味・関心度を見極めることが可能です。
アルゴリズムによる分析の結果、最適な動画を提案できます。
ユーザー側は、自分好みの動画に出会える機会が多いとの成功体験を味わえる仕組みです。
ワークマン
愛用者が多いワークマンで行われているカスタマーサクセスの方法は、トレンドに遅れを取らないような積極的なコミュニケーションです。
SNSを常にチェックし、ワークマン製品に関する情報発信を徹底的にリサーチしています。
それだけにとどまらず、他の企業と一線を画すのが、頻繁にワークマン製品の情報を発信しているユーザーを「ワークマン公式アンバサダー」に認定する独自システムの導入です。
ワークマン公式アンバサダーには、いち早くワークマン製品を見たり新製品発表会へ招待したりできる特典を付与しています。
時折、新製品のモニターやアンケートを依頼し、ユーザー視点の声を取り入れることもワークマンの特徴です。
アンバサダーなどから取り入れた意見は、製品開発・改善に生かされています。
Zoom
コロナ禍以降、多くの企業が導入しているビデオ会議システムのZoomには、カスタマーサクセスチームがあります。
Zoomライセンス購入後、カスタマーサクセスチームよりアカウントセットアップの案内メールが送付されるため、初めて利用する場合も安心です。
メールのガイドラインに従いセットアップできるものの、機能や運用方法に関する質問がある場合は、メールに返信して質問できます。
分からない場合は、いつでも専任のカスタマーサクセスマネージャーがサポートしてくれるため、気軽に相談可能です。
また、Zoomでは定期的にトレーニングウェビナーが開催されています。
ユーザー側は、疑問点や不安点をそのままにせずにすむため、成功体験を実感できることがメリットです。
スマレジ
最近、テレビCMでも見聞きする機会が多くなったスマレジは、販売データを専門とするプラットフォームを提供しています。
クラウドPOSレジとしてiPadやiPhoneを利用可能です。
顧客獲得を目指し、Zoomによるオンライン相談を実施したり実績を体験できるショールームを設けたりして、プラスアルファの案内を心掛けています。
サポート体制も充実しており、顧客は実際に操作しながら疑問を解消できるため満足感が高い印象です。
加えて、社内ではお客様の声に加えカスタマーサクセス部門での取り組みを共有しています。
サポート品質の向上に努め、専門性の高い素早い対応を目指していることが特徴です。
Sansan
Sansanは名刺をクラウド管理できるアプリで、営業パーソンには欠かせないツールを提供している企業です。
近年、政府主導の下、デジタルインフォメーション化が進んでいます。
そのため、クラウド管理サービスを利用する企業が増えてきました。
クラウド上で名刺管理ができる他、クラウド請求書および契約にも対応しているため、幅広い部門でカスタマーサクセスが活躍しています。
実は国内で初のカスタマーサクセス導入企業がSansanです。
顧客の成功事例をパターン化して分類し、サクセスマップを作成し、今後の方法性や必要な提案を行っています。
他の方法は、顧客が登録した名刺データ数や活動状況データを基にしたコミュニケーションです。
さらに、名刺のデータ化に関する情報など、ユーザーを対象としたイベントを開催しています。
Slack
国内外で愛用者が多いビジネスチャットツールを提供している企業のSlackでは、顧客の声を大切にする体制が整っています。
主な特徴は、独自のスコアリング測定です。
ログイン状況・機能の活用状況・業務の自動化状況・ユーザーの満足度に関して、スコアリング測定を実施し、コミュニケーションの最適化を検討しています。
他の取り組みは、チャンピオンズネットワークの運営やエグゼクティブビジネスレビューなどです。
Slackは、ユーザーが求める価値やニーズに見合ったものを提供しているかに関する顧客の声を大切にしています。
カスタマーサクセス文化が構築できているのがよく分かるのは、ユーザーと対面でのミーティングを実施し、満足度や意見などをヒアリングしている点です。
Apple
Mac・iPad・iPhoneなどを取り扱っている、世界でも名が知られたAppleは、充実したサポート体制に定評があります。
Apple製品のサービスおよびソフトウエアに関するサポートは、チャット・電話・メールなどで相談可能です。
相談方法は、大きく分けて3種類あります。
Genius Bar(ジーニアス バー)の予約・Apple正規サービスプロバイダへの訪問・デバイスの送付です。
Appleのエキスパートが、ユーザーに合わせた必要なサポートをしてくれます。
デバイスの設定・Apple IDの発行・画面の交換など、あらゆる状況に対応できるサポート体制です。
スターバックス
世界中で知名度が高いコーヒーチェーンといっても過言ではないのが、スターバックスではないでしょうか。
スターバックスが有名になり、安定した人気を誇っている主な理由は、カスタマーサクセスの導入にあります。
スターバックスは、ショップに立ち寄る顧客に対して休息できるコミュニティの提供を目指しており、それが顧客が味わう成功体験です。
例として、無料WiFiの提供・居心地の良い店舗・フレンドリーな接客があります。
顧客は、スターバックスで過ごした居心地の良さが成功体験として記憶に残るため、再び利用するとの良いサイクルです。
加えて、スターバックスカード・スターバックスリワードなどの施策も効果を上げています。
カスタマーサクセスになるには
カスタマーサクセスはニーズが高い職業であるため、求人サイトなどでは様々な企業が募集しています。
先述した企業と同等の大規模な企業もあれば、ITベンチャーなど小規模の企業も存在します。
これからカスタマーサクセスの職に就きたいと考えている人は、いわば「選び放題」とも言えるでしょう。
しかし注意したいのが、カスタマーサクセスとして成功するために踏むべきステップ。
いきなり大手企業や専門性の高いカスタマーサクセスを狙っても、打率が悪く転職が難航しがちです。
特にクライアントワーク未経験の方は、アシスタント的なカスタマーサクセスやマニュアルの整ったオペレーター系のカスタマーサクセスを選ぶと良いでしょう。
また、選ぶ業界はできる限り自分が詳しい業界がおすすめです。
専門性が高い職種でもあるため知識に長けている必要があり、ゼロからのスタートだとキャリアの成長が思うように進まないでしょう。
なお、自分に適性のあるカスタマーサクセス職を見つけるために最もおすすめなのが、転職エージェントに求人紹介をもらうことです。
転職エージェントでは求職者一人一人の性格的特徴やスキルから適性を分析し、相性の良い企業を紹介してくれます。
書類の添削や面接対策のアドバイスなども一貫してサポートしてくれるため、転職が初めての人も安心して進められることでしょう。
まとめ
カスタマーサクセスは、サービスを提供する企業が安定的に利益を守るために、そしてエンドユーザーが快適にサービスを使い続けるために欠かせない役割を持っています。
カスタマーサクセスを専門とする職に就いてキャリアを成功させるためには、それなりの覚悟が必要でしょう。
自社のサービスだけでなく市場について学び続けなければなりませんし、クライアントワークであるがゆえにコミュニケーション力も磨き続ける必要があります。
決して楽な仕事ではないですが、仕事をやり込めばやり込むほど自分のキャリアが大きく成長するとも言えるでしょう。
これから転職を考えている人は、まず業界選びから慎重に行い、転職エージェントに相談をするなどして丁寧かつ綿密に転職活動を行いましょう。
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