転職時に希望年収を伝えるのはあり?円滑に交渉するためのコツ
転職活動中の人の中には、転職をすることで年収アップを狙いたいという人も多いことでしょう。
ある程度のキャリアを持っている人なら、求人情報に記載の給与以上を見込むことができますが、交渉することによってどの程度まで年収アップができるかが気になるところですね。
今回ご紹介するのは、転職活動中の人に知っていただきたい希望年収の交渉術です。
収入は自分の価値にニアリーな部分があるので、自分のスキル・経歴・現在の収入を基準に正当な給与を得られるように交渉の計画を立てましょう。
転職で希望年収を伝えることは失礼ではない
転職時に希望年収を伝える行為に対してシビアに考えてしまう人も多いことでしょう。
お金のことは誰しも話しづらいセンシティブな部分であるため、仕方ありません。
しかし、希望年収を使えることは決してマナー違反でも失礼な行為でもありません。
なぜなら、転職は自分の価値を買ってもらう行為でもあるからです。
会社側も価値の高い人を欲することは当たり前であり、価値の低い人にお金を払いたいと思わないのです。
せっかくスキルを持っていても、安売りしすぎると自分の価値が下がってしまいます。
価値が低く見られると、優良な会社との縁に巡り会うことが難しいので、自分に自信を持って正当な給与をいただけるように希望年収の交渉をしましょう。
転職時に希望年収を聞かれる理由
転職時に希望年収を聞かれる理由は二つあります。
一つは人件費の調整を行うため、もう一つが転職者の自己評価と価値を知るためです。
給与という定量的な部分を把握することで、会社の予算面と転職者の価値を知ることで正当な評価がしやすくなるのです。
予算と合っているか確認するため
会社の採用活動においては、必ず予算を立てて採用計画の立案〜採用者の決定までを行っています。
一般的な会社で採用活動をするときは人事部が行っていますが、このとき人事責任者は会社から採用費用や採用者の人件費の目安などを設けられた上で計画を立てています。
年収いくらの人を何人欲しいのか?という計画を持っているため、複数人採用する場合は一人当たりの給与設定を調整する必要があります。
そのため、採用希望者一人一人に希望年収を確認するがあるのです。
転職者の希望年収を把握することで、会社の予算に対して見合っているか?自社の評価基準に対して正当な年収を設けることができるか?などを採用基準の判断材料にしています。
自己評価と価値を知るため
年収はその人の社会的な価値を表す判断材料にもなるため、希望年収を聞くことで会社側はその人の価値を把握することができます。
転職活動における面接とは、いわば会社と転職者のお見合いの場。
会社が欲しているスキルを有している人かどうかを判断するための場なのです。
また、希望年収は転職者の自己評価や価値観を知るための重要な判断材料にもなります。
転職者の経歴や持っているスキルと希望年収を照らし合わせたときに、想定の範囲内であるかどうかが測れます。
あまりにも解離がありすぎると、「自己評価ができていない人」というレッテルが貼られてしまうので、正当な基準で伝えられるかがポイントです。
転職時に希望年収を伝えるときの基準
転職時に希望年収を伝える基準は次の2つを指標にすることをおすすめします。
- 現在の給与をベースに伝えること
- 現在よりもベースアップできる明確な理由があること
希望年収を伝えるときは、高ければお得というわけではありません。
自分でも正当な評価基準を持って伝えなければ、「自己評価が高すぎるお金にがめつい人」に見られてしまいます。
また、上記2つを指標にしても判断に迷う場合は、希望の給与額に幅を持たせると良いでしょう。
幅があれば先方も予算面を考慮した上で判断ができるので親切です。
具体的な伝え方について、次より順を追って解説します。
現在の給与をベースに伝える
まず基準となるのが現在の給与額です。
今もらっている給与額が今の自分の価値の基準ということに近いので、ここを指標に調整しましょう。
また、転職先によっては最低給与額が今の給与よりも低い場合があります。
年収が低くなってしまうと、せっかく転職してもまた茨の道を歩みながら給与アップに努めなければなりませんので、今の給与を落とさないように調整したいところです。
そのためには現在の給与額をしっかりと伝えた上で、会社側がどのくらい調整できそうかを質問してみると良いでしょう。
伝え方の例として以下を参考にしてみてください。
- 現職では年収450万円ですが、これを基準としてご判断いただきたく存じます。
- 現職では年収350万円ですが、差し支えなければ貴社の今回の求人内容の給与額からどのくらい調整いただけるかお伺いできますでしょうか。
このように、希望年収を伝えるときは前置として現在の年収を伝えた上で、下に出る伝え方で「ご判断いただけますか」と相談することをおすすめします。
現在よりもベースアップする場合は明確な理由を伝える
ベースアップしたい場合は、正当な理由がなければ会社側が給与額を判断することができません。
せっかく転職をするなら、「年収アップしたい!」という気持ちを持つことは当然ですが、なぜ今よりも高い年収をもらえる価値があるのかを言語化できていなければ、ただわがままを言っていることに等しくなります。
明確な理由を具体的に伝えるためには、スキルや資格や実績などを伝えるとスムーズです。
なお、表彰された実績や取得した資格があれば、以下のように伝えておきましょう。
同様のスキルを持った人材の平均年収と比較できるのでおすすめです。
- 現職の年収は450万円ですが、◯◯の資格を取得したため500万円を希望します。
- 現職の年収は500万円ですが、先月◯◯の実績が評価されたため次年度550万円に上がる予定です。それを基準にしていただけると幸いです。
具体的理由があれば失礼には当たりませんので、自信を持っている部分があれば積極的に伝えた上で交渉をしましょう。
希望の給与額に幅を持たせるのもアリ
先ほどあげた2つの基準をもっても判断が難しいという場合は、希望年収にある程度幅を持たせておくことをおすすめします。
ある程度幅があれば、会社側も予算の範囲内で調整することができるので親切です。
ただし、最低給与額は今の年収を下回らないようにした方がベターです。
伝え方としては以下の例です。
- 年収450〜500万円を希望していますが、他の採用候補者との兼ね合いもあると思いますのでご判断はお任せします。
転職時に希望年収を伝えるときの注意点
ここからは、希望年収を伝えるときの注意点についてご紹介します。
お金の話はセンシティブな一面があるため、伝え方を間違えてしまうと不採用になる確率を上げてしまうことにもなりかねません。
次の3つのことに注意して円滑なコミュニケーションのもと希望年収交渉を進めましょう。
- 現在の年収の総支給額を把握すること
- 全て企業任せにしない
- 希望年収を高くしすぎない
この3つに注意すれば交渉が円滑に成立しやすくなります。
具体的な背景について、次より詳細をご紹介します。
現在の年収の「総支給額」を把握しておくこと
現在就業中の場合は総支給額を把握しておきましょう。
総支給額は会社から毎年もらえる源泉徴収票に記載されています。
総支給額を把握しておかないと、希望年収の交渉時に現在の年収を伝えるときに誤差が出てしまうことも想定されます。
なぜなら、実際の手取り額と総支給額が大きく違うからです。
税金などが引かれて手取り額が決まることはお分かりだと思いますが、体感で年収を把握すると厳密な計算ができず、低く見積もってしまいがちです。
そうなると希望年収が今よりも低いことに気づかず、入社後に年収が減ってしまうことも想定されます。
例えば、源泉徴収票に基づく総支給額が420万円なのに、「現在の年収が390万円なのでそれ以上を希望します」と伝えてしまうと、年収が今よりもガクンと落ちてしまいます。
源泉徴収票が手元にないという人は、会社の経理部に依頼をして再発行してもらうようにしましょう。
企業任せにしない
希望年収を交渉するときに下手に腰を低くしすぎてしまうと、足元を見られて年収を上げることができないリスクもあります。
「現在の年収は350万円ですが、御社のご判断に合わせます」だと会社側もどのくらい上げたら良いかが把握できず、現在の年収と同じ基準で設定されてしまうこともあります。
年収は自分が持つキャリアに対する価値です。
価値の高い人が希望年収を伝えることは正当な行為ですので、自信を持って交渉しましょう。
希望年収は高くしすぎない
逆に希望年収を高くしすぎると「自分の価値がわかっていない人」と思われてしまいます。
希望年収交渉のタイミングのほとんどは面接時なので、高すぎる年収を希望すると不採用確率が大幅に上がることが想定されます。
会社が採用活動をするときは、基本的に採用候補者の希望年収も加味して合否の検討をします。
人事部内で相談しながら稟議をあげるとき、役員から「高すぎる」と鶴の一声で不採用になってしまうことも。
面接でせっかく良い印象を与えられても、希望年収一つで印象を悪くしてしまったら元も子もありません。
先ほどご紹介した希望年収を伝えるときの基準をもとに、地に足をつけて正当な年収を伝えるようにしましょう。
面接時に希望年収を聞かれた場合の答え方例
面接時には、面接官から以下のように希望年収についての質問をされることが大半です。
- 「今回の弊社の募集要項だと、月給25万円からですが問題ないですか?」
- 「今回の募集だと最初は25万円スタートですがよろしいですか?」
このように、会社側から年収について問われる場合は、最低月給で問題ないかどうかを質問されるケースが多いです。
ここですんなりと了承してしまうと年収は上がりませんので、答え方をミスしないように慎重に進めていきたいところですね。
急に希望年収を質問されたときに焦らないように、次の2つのパターンの答え方の例をもとに想定して準備しておきましょう。
前職と同水準の年収を希望する場合の答え方
- 「御社の給与システムについて承知いたしました。しかし、現在の年収が400万円のためそれを基準にご判断いただけませんでしょうか。」
- 「最低月給が25万円とのことですが、現在の年収は400万円です。入社直後と言わずとも、一定期間経過後などに現職の水準と合わせていただくなどは可能でしょうか。」
ポイントは現在の年収を伝えることですが、先方が今回の採用活動で考えている給与水準と解離がある場合は、入社から一定期間経過後などに判断してもらえるように伝えることです。
試用期間を設けていない会社でも、入社後判断するために改めて試用期間を設けた上で採用してもらえる可能性もあります。
前職よりもベースアップしたい場合の答え方
- 「今回の転職活動においては、年収650万円を希望しております。◯◯の資格を取得したため御社の部署でその専門的なスキルを発揮できると考えているからです。」
- 「今回の転職活動においては、年収500万円〜600万円の水準でご検討いただきたい所存です。背景としては、前職で半期の営業成績が◯◯万円以上であったためです。御社の主力サービスである◯◯の売り上げ拡大にも私のスキルを活かせると感じております。」
ポイントはなぜベースアップしたいのかを具体的に伝えることと、今持っているスキルをどうやって活かせるかを伝えることです。
数字で伝えるとなお良いでしょう。
転職時に希望年収が通らないケース
頑張って希望年収を交渉しても、希望通りにいかないケースももちろん存在します。
その理由の多くは、会社側が求めている以上のスキルに満たないと判断された場合です。
具体的には次の2つが挙げられます。
同業界でもキャリアチェンジをする場合
現職と同じ業界への転職であっても、キャリアチェンジの場合は未経験者と同等の扱いになるため希望年収が通りにくいケースが大半です。
キャリアチェンジというのは職種を変えることなので、今まで従事していた仕事とは毛色が違う仕事内容になります。
そのため、会社側はゼロベースで研修などを行なって育てていく必要があり、未経験者と同じ扱いになるのです。
例えば不動産業界内だとした場合、賃貸仲介営業から土地活用提案営業になった場合、業界は一緒ですが持つべきスキルも営業プロセスも違います。
不動産に関する専門資格を持ってれば別の話ですが、単純に職種を変えるだけではゼロから学ぶ必要があるので、希望年収は通りにくいと言えます。
ただし、同じ業界内でキャリアチェンジをする場合は全くの未経験者よりも昇給が早い可能性はあります。
半年後や1年後にどのくらいの水準になりそうかは、面接時点で質問してみるのも良いでしょう。
現職と業界が異なる未経験スタートの場合
現職の業界と異なる業界かつ別職種へ転職する場合は、ゼロからのスタートになります。
今まで学んでこなかった知識を覚えたり、その職種の仕事の進め方から覚える必要があります。
未経験の場合は3ヶ月は試用期間として採用されることが多く、この場合はもちろん希望年収を通すことは不可能に近いです。
試用期間を終えたとしても、未経験者が一人前になるまでには長い期間を要するので、昇給するまでに茨の道を歩むことになるでしょう。
年収をアップさせたいという場合は、できる限り経験したことのある業界や職種に近い仕事を選ぶことをおすすめします。
自ら希望年収を伝える場合のタイミング
面接時に面接官から希望年収の話がでない場合もあります。
その際はタイミングを見計って自らプッシュしにいく必要があります。
ベストなタイミングは、採用に近い状態のときでしょう。
採用したいと思ってもらえていると確信できそうなら、そのタイミングを狙うと円滑に交渉がしやすいです。
具体的には次の2つのタイミングをおすすめします。
内定後かつオファー面談前が好ましい
既に内定が出ている状態であれば採用されるかどうかの探りを入れずに対応することができるので、希望年収の交渉がしやすいです。
また、会社によっては内定後に「オファー面談」というものを設けています。
オファー面談とは、内定者と年収や待遇などをすり合わせて合意を取ることで、入社の意思を確定させるための面談。
このときなら先方から希望年収について質問されることがあるので、自らベストタイミングを狙って交渉しにいく必要はありません。
面接時に聞くのもあり
オファー面談を設けていない会社は、面接時に聞いてみましょう。
とくに中小企業や地方企業ではオファー面談を設けずに採用活動をしている会社が多いです。
面接後に改めて電話などで聞く行為はハードルが高い人が多いと思いますので、面接時の最後の質問の時間に聞いてみましょう。
希望年収の交渉に失敗したときの対処法
今回ご紹介したポイントを抑えて希望年収の交渉をしても、給与問題は会社の規定ですから、交渉失敗ということもあります。
仕方がない場合もあるので、もし希望年収交渉に失敗した時は、入社後に昇給を狙うか条件の良い会社へ転職するかの二択しかありません。
いずれの選択肢をとっても納得がいく転職を終えられるように、この後解説する対処法を読んで参考にしてください。
入社後の成果報酬を狙う
営業や販売系の職種であれば、基本給+成果報酬という給与システムの会社も多く存在します。
これらの職種は利益を出した結果に応じて給与をアップしていく仕組みです。
マネジメント職にでもつかない限り、希望年収を交渉しても基本給を大幅に上げることはほぼ難しいと言えます。
しかし成績を上げたら上げた分だけ成果報酬がもらえる会社なら、今よりも年収がグッと増えることも期待できます。
とくに、保険会社や電力・ガス代理店などのインフラ業界、不動産業界などの営業は成果報酬が高い傾向にあるので、営業力に自信がある人は年収アップも期待できるでしょう。
なお、成果報酬がどのくらいかは会社によって異なるので、希望年収交渉に失敗した際は必ず成果報酬制度の仕組みについて聞いておくことをおすすめします。
改めて転職しなおす
希望していた条件と合わない会社に妥協して入るよりも、転職し直す方が良い場合もあります。
年収や待遇は、長く働くための条件ともなる部分です。
「給与が上がらないな」と我慢しながら働くことはキャリアアップのためにもならないので、また一から転職活動をし直しが方が得策です。
転職をし直す場合は、複数の会社で面接を受けて交渉し比較検討して決められるようにしておくと安心です。
転職エージェントに希望年収の交渉を依頼するのもアリ
実は、希望年収交渉は自分で行わなくても円滑に進める方法があります。
それが転職エージェントに協力を仰ぐことです。
転職活動の際、転職エージェントに登録をすれば求人紹介から面接対策、希望年収交渉、入社日の調整なども総合的にサポートしてくれます。
転職エージェントは数々の企業と人材をマッチングさせてきたプロなので、希望年収の交渉術にも長けています。
転職エージェント経由で希望年収交渉をすれば、会社に直接交渉しなくても良いので気持ち的に楽なはずです。
転職エージェントに依頼することのメリット
1|希望年収に合わせて紹介してくれる
転職エージェントに登録をして面談をすると、まず希望条件や行きたい業界などについて話します。
この時に年収についても相談するので、希望年収に見合った案件を優先して紹介してくれます。
2|企業に合わせて交渉してくれる
転職エージェントは、クライアントである紹介企業の採用動向を綿密に分析したデータを保有しています。
そのため、給与の相場感や交渉のベストタイミングなども熟知しており、円滑に希望年収交渉ができるノウハウを持っています。
会社側の給与に対する温度感についてももちろん熟知しているので、円滑なコミュニケーションを前提に話を進めることができるでしょう。
3|自分の市場価値と年収相場にあった案件紹介をしてくれる
希望年収交渉に失敗する人の中には、自分の市場価値と希望年収が見合っていない人も少なくありません。
自分の価値に見合った年収を算出することは、自分自身ではなかなか難しいことですから、転職のプロであるエージェントに適正な範囲を判断してもらうと良いでしょう。
自分の市場価値と年収相場がわかれば、どのくらいまで年収を上げられるかの限界値が知れるので、希望年収交渉もしやすくなります。
まとめ
転職時に希望年収を交渉することは、決して失礼なことではありません。
自分の価値を正当な評価基準のもと「年収」という形で判断してもらうことは当然であり、本来の価値よりも低い給与で働くことは将来的にもマイナスに働くことでしょう。
我慢して低い年収のまま働くよりも、納得がいく年収が担保できている状態で働く方が圧倒的に幸福度が高いはず。
そのためには転職活動において希望年収交渉に労力を費やすことは、将来の自分のための投資とも言えます。
転職には不安や悩みがつきものですが、納得がいくまで進み続けることをおすすめします。
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