PDCAはもう古い!現代で成果を出すための「OODAサイクル」を紹介
PDCAは、ビジネスにおいて最も有名なフレームワークだと言っても過言ではありません。
しかし、近年「PDCAはもう古い」「現代では使えない」と言われているのをご存じでしょうか?
変化の激しい現代に、まだPDCAを使い続けている企業は、今後生き残れない可能性があります……。
そこでこの記事では、PDCAが古いと言われている理由や、PDCAに代わる新しいフレームワーク「OODA」について紹介していきます。
・チームとしての成果に伸び悩むリーダー
・業務の進め方を模索している中小企業の経営陣
上記のような人に役立つ内容になっているので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
PDCAとは
PDCAとは、以下4つのプロセスの頭文字をとった単語です。
・D(Do):実行
・C(Check):確認
・A(Action):改善
行動を改善したら再び計画に戻ることから、「PDCAサイクル」と呼ばれることもあります。
PDCAは、日本で最も有名なフレームワークの一つ。
ビジネス研修や新卒研修で勉強したことのある人も多いでしょう。
PDCA発祥の歴史
PDCAは1950年代、W・エドワーズ・デミング氏によって考案されました。
元々は工場の生産管理のために使われたフレームワークでしたが、徐々に使用範囲を拡大させ、現在はビジネス全般に利用されています。
今から70年以上の前に生まれた概念が今でもこれだけの知名度を誇っていることから、いかにPDCAが使い勝手の良い管理手法かがわかります。
PDCAが古いと言われている理由
そんなPDCAですが、「現代ではPDCAは通用しない」という声が増えてきています。
PDCAが生まれたのは70年以上前なので、現代のビジネスに合わないのも無理はありません。
ここからは、PDCAが古いと言われている3つの理由を、以下の順番で解説していきます。
1.変化の速さについていけないから
2.ルーティンワークよりプロジェクトが増えているから
3.AI技術が急速に発展しているから
変化の速さについていけないから
テクノロジーの進化スピードに、PDCAではついていけないと言われています。
現代において、テクノロジーは過去に類を見ない速度で発達しています。
PDCAサイクルは、具体的なアクションよりも計画や改善に時間をかける手法なので、すぐにニーズが変化する現代にはマッチしていません。
以下は、各テクノロジーが5,000万ユーザーを獲得するまでにかかった時間です。
・車:62年
・電話:50年
・テレビ:22年
・スマートフォン:12年
・ツイッター:2年
・ポケモンGo:19日
近年のテクノロジーがいかにスピーディーに発達しているかがわかりますね。
このような激しい変化に適応するには、PDCAよりも高速でサイクルを回せるフレームワークが必要です。
ルーティンワークよりプロジェクトが増えているから
PDCAサイクルは、毎回同じ工程で業務を進める「ルーティンワーク」に適しているフレームワークです。
しかし現在、ルーティンワークはデジタルツールに代替されつつあり、代わりに「プロジェクトワーク」が増えています。
プロジェクトワークは、新製品開発のような、特定の目標を達成するために行う創造的な業務のこと。
プロジェクトワークにおいては、新しいやり方やアイデアをスピーディーに実施していくので、既存の工程を改善するPDCAは機能しません。
単純作業がデジタルに代替される流れは今後も続いていくので、これからはよりPDCAに適さないビジネス環境へと変化していくことでしょう。
AI技術が急速に発展しているから
ビッグデータを活用したAI技術の発展も、PDCAの衰退を助長しています。
AIの大きな役割は「過去のデータを分析・統計すること」です。
AIが既存のアクションに対するデータを活用するので、人間は「これから何をするか?」「新しい手法はないか」と考えることにリソースを割けます。
しかし、PDCAは既存のアクションに改善を加えるフレームワークなので、人間の仕事とは目的が異なりますよね。
過去に例のない、新しいアイデアを取り入れることと、PDCAの目的が合致していないことも、「PDCAは古い」と言われる一因になっています。
PDCAは海外では使われていない
実は、これだけPDCAが有名な国は日本くらいしかありません。
事実、PDCAが生まれたアメリカの経営学において、PDCAについては一切教えられていないそうです。
アメリカでは1980年頃から製造業が衰退していきました。それと同時にPDCAの利用頻度も落ちたそうです。
一方で日本では、トヨタで生まれた「カイゼン」という言葉が世界中で有名になったように、製造業で大成功を収めた歴史があります。
その成功の名残があるため、今になってもPDCAに固執する企業が多いのかもしれませんね。
PDCAが向いている業務とは
PDCAが適している業務は、単純作業を繰り返す「ルーティンワーク」です。
ルーティンワークとは、例えば以下のようなものです。
・請求書の発行
・すでに大成功を収めている事業
とはいえ、仕事がルーティンワークだけの会社はないはずなので、チームの仕事全体をPDCAに当てはめるのは無理があるでしょう。
チームの管理手法というよりも、定性的な一部の業務にだけPDCAを当てはめるのが効果的かもしれません。
現代に適した「OODAフレームワーク」
PDCAよりも現代ビジネスに適したフレームワークに「OODA」というものがあります。
OODAとは、以下4つのプロセスを何回も回すフレームワークのことです。
1.Observe(観察)
2.Orient(方向づけ)
3.Decide(決定)
4Act(行動)
順番に詳しく解説していきます。
O:Observe(観察)
Observe=「観察」フェーズでは、ただひたすらに現状に関するデータを収集していきます。
ここで観察する対象は、
2.競合
3.自社
の3要素です。マーケティングでは「3C」と呼ばれる要素ですね。
主観的な感情を入れず、客観的な「生のデータ」収集に努めましょう。
ポイントは、どんな些細な情報でも、切り捨てずに集め切ることです。
ニーズの多様化した現代においては、どんな情報がヒントとなるかはわかりません。
些細な気づきもキャッチして、データとして集めておきましょう。
O:Orient(方向づけ)
Orient=「方向づけ」では、観察によって集めたデータをもとに、現状を打開するための仮説を立てていきます。
ここでは、正解を導き出す必要はありません。
仮説の精度よりも、データに基づいた仮説をどれだけたくさん出せるか?が重要です。
一人では多くの仮説をアウトプットするのは難しいので、チームでディスカッションをしながら考えてみるのが良いでしょう。
D:Decide(決定)
Decide=「決定」では、インパクトの大きそうな仮説に絞り込み、実際に行動に移せるレベルにまでタスク化します。
決定フェーズにおいては絞り込む仮説は、インパクトの大きさに加えて、組織の方向性に沿っているかを意識することも大切です。
OODAでは、事前に明確な目標を立てるプロセスはありません。
そのため、アクションプランが組織の方向性と大きくズレるリスクがあるのです。
決定段階では、上長の承認を得るようにルール化しておくのがベストでしょう。
A:Act(行動)
アクションプランを実行に移すのが、Act=「行動」フェーズです。
ポイントは、行動を起こしたらすぐに「観察」フェーズへ戻ることです。
OODAはスピード感が命。小さくアクションをして、その影響を素早く観察するようにしてください。
PDCAとOODAの違い
ここまで、OODAの概要について簡単に解説してきました。
しかし、「PDCAと何が違うの?」と感じている方もいらっしゃるかと思います。
PDCAとOODAの違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
・PDCA:工程が決められた業務をより効率的にするために行う
・OODA:状況が不明瞭な中で効果的な打ち手を探すために行う
PDCAは「工程が明確な業務を、より低コストで成果を出せるように改善する」のが目標です。
ある程度成果が出ている業務を効率化するなら、OODAよりもPDCAの方が適しているでしょう。
一方でOODAは、「工程が不明瞭で、効果的な打ち手さえわからない」といった状況で真価を発揮します。
現状で入手できるデータをもとにいくつもの仮説を立て、スピーディーに実施していくので、OODAは答えの見えない状況で重宝するでしょう。
OODAのメリット
OODAには、PDCAにはない強みがあります。
そこでここからは、OODAのメリットを3つ紹介していきます。
1.サイクルの回るスピードが速い
2.新しいアイデアを取り入れられる
3.プレイヤーの当事者意識が高まる
サイクルの回るスピードが速い
OODAは仮説を実行してはすぐに観察に戻るので、サイクルの回るスピードが速いです。
正解が不明瞭な現代では、一つの成功例がいつまでも通用するとは限りません。
そこでOODAを使い、小さな仮説を次々と実行・観察していくことで、スピーディーな変化にも対応できるのです。
特に、前例のないビジネスに挑戦するスタートアップ企業と相性の良いフレームワークだと言えます。
新しいアイデアを取り入れられる
新しいアイデアを取り入れやすいのも、OODAの大きなメリットです。
PDCAは既存業務の効率化がゴールなので、ビジネスを大きくドライブする斬新なアイデアが生まれづらいデメリットがあります。
一方でOODAは、新しい打ち手をどんどん試すことが核になっているフレームワークです。
既存の枠組みに囚われないアイデアを積極的に試せるOODAは、カオスな変化が起こる現代にピッタリな考え方だといえます。
プレイヤーの当事者意識が高まる
PDCAに比べてOODAは、個人の裁量が大きくなるフレームワークです。
そのため、部下の「やらされ仕事」が減り、業務へのモチベーションアップにつながる可能性があります。
近年は、「ゴールだけを伝えて、プロセスは部下に任せる」というスタイルの企業も増えています。
プロセスを部下に委ねるやり方は、プレイヤーの試行錯誤数が増えるため、成長につながりやすい側面があります。
OODAのデメリット
OODAの弱点は、「チームの統制を取るのが難しい」ところです。
前述の通り、OODAは個人の裁量が比較的大きめなフレームワークなので、「個人の成績はいいけど、チームとしての成果にはそこまで繋がっていない……」という事態になることも。
事前にチームとしての目標をシェアすることが有効ですが、目標で縛りすぎるとOODAの強みが霞んでしまいます。
チームと個人の裁量をどう調整するかは、マネージャーの腕の見せ所でしょう。
OODAの具体例
「なんとなくわかったけど、実際に自分達の業務に取り入れるイメージがつかない……」と感じた方もいらっしゃると思います。
ここからは、OODAサイクルの回し方を、営業を例にして解説していきます。
O:市場や顧客のデータを集める
「新規顧客の獲得数をもっと上げたい」という課題があるとしましょう。
まずは観察です。現状について、リアルなデータをできるだけたくさん集めます。
・既存の営業手法に対する顧客のリアクション
・営業の際に意識しているポイントとその効果
前述の通り、些細な気づきでもメモに書き留めておきましょう。
また、数字で表現できる客観的なデータを集めることもポイントです。
「多い」「先月より減少」のような曖昧な言葉を使わず、数値化できるデータだけを集めてください。
O:仮説を立てる
集めたデータに基づいて、仮説を立てていきます。
たとえば、「先月の顧客獲得数が、同期の平均より20%少ないな」と気づいたとしましょう。
そこで、以下のように考えを巡らせてみます。
・「一番活躍している人から学べばいいんじゃないか?」
・「自分よりも成績がいい人全員の話を聞いて、共通点を取り入れてみるのはどうだろう」
上記の例では、一つのデータから仮説を出そうとしていますが、実際はより多くのデータから気づきを得られるのがベストです。
D:具体的なアクションに落とす
アウトプットした仮説の中から、インパクトの大きそうなものを具体的なアクションに落とし込みます。
Decide(決定)の段階では、5W1Hを明確にしたアクションにまで分解するのがポイントです。
たとえば「同期の〇〇に話を聞いてみる」では粒度が荒く、すぐに行動に起こせません。
・「居酒屋の予約をとる」
上記のように、スケジュール帳に書き込めるくらい具体的に落とし込むようにしてください。
A:行動を起こす
Decideフェーズで決定したアクションを実行します。
OODAはスピーディーに回すことが重要なので、「小さなアクションを複数実行し、迅速に観察フェーズに戻る」ことを意識してください。
実行に時間をかけ過ぎてしまうケースもありますが、それではOODAの強みが失われてしまいます。
実行したらすぐに新しいデータを集めて、新たな仮説を生み出しましょう。
OODAの注意点
OODAは比較的新しいフレームワークなので、明確な方法論が確立されているわけではありません。
そのため、何も考えずにOODAを取り入れてしまうと、期待した効果を得られない可能性が高いです。
そこでここからは、OODAの注意点3つを、以下の順番で解説していきます。
1.裁量のバランスを取る
2.すべてを数字で考える
3.サイクルのスピードを高める
裁量のバランスを取る
前述の通り、OODAはプレイヤーに一定の裁量を渡すので、チームとして統率を取るのが難しい側面があります。
チームの連携を崩さないために、マネージャーは以下の点を意識するのがおすすめです。
・逐一経過を報告してもらう
・定期的にディスカッションの時間を設ける
また、新入社員に大きな裁量を渡しても、戸惑ってしまう可能性が高いので、最初のうちは丁寧にフォローをしてあげるといいでしょう。
すべてを数字で考える
観察フェーズ(Observe)では、客観的なデータを集めることに集中しましょう。
最初の段階で私的な判断や感情が入ってしまうと、データが歪んでしまい、仮説の精度が落ちてしまいます。
具体的には「売り上げが大幅に下がっている」「調子が悪い」などの感覚的な言葉を使わず、数値で表せるデータを収集することがポイントです。
サイクルのスピードを高める
繰り返しになってしまいますが、OODAはサイクルのスピードが命です。
最初に具体的な計画を立てない分、打ち手を増やして前に進み続けなければ、OODAの強みは発揮されません。
状況にもよりますが、できれば「1日でOODAを一周する」くらいのスピードを目指したいところです。
「この打ち手には効果がなさそうだな」と判断したらすぐに切り捨てて、迅速に新たな仮説を立てましょう。
【補足】PDCA・OODA以外のフレームワーク
最後に補足として、PDCA・OODA以外の4つのフレームワークを紹介しようと思います。
・STPDサイクル
・DCAPサイクル
・PRDサイクル
STPDサイクル
STPDサイクルは、See(現状を見る)、Think(分析)、Plan(計画)、Do(実行)の4つのフェーズをサイクルさせる管理手法です。
内容自体はPDCAと大差ありませんが、実行までにより多くの時間をかけることが特徴になっています。
慎重な側面を考慮すると、OODAよりPDCAに近い考え方だと言えそうです。
DCAPサイクル
DCAPサイクルは、PDCAの順番を入れ替えたフレームワーク。
実行ありきの順番になっていることがポイントです。
OODAよりもスピード感がありそうですが、事前情報なしでDoを開始するので、無駄なアクションが多くなってしまいがちな点があります。
逆に考えると、「状況が不明瞭だし、現状で収集できるデータも一切ない」という、ゼロからビジネスに着手するシチュエーションでは、DCAPサイクルを使うのが良さそうです。
PRDサイクル
PRDは、Prep(準備)→Do(実行)→Review(見直し)の3ステップを繰り返すフレームワークです。
特徴は、最後のReviewにおいて、第三者からの批判を取り入れること。
プレイヤーだけで効果測定をするだけでは気づきにくい、他の人の視点を取り入れられるので、検証作業の精度を高めることにつながります。
まとめ
今回は、PDCAが古い理由と、新しいフレームワークである「OODA」について詳しく解説してきました。
OODAをチームに取り入れても、最初はなかなかうまくいかないかもしれません。
個人個人に裁量をわたすのは一定のリスクが伴いますし、チームとして機能するかも不明瞭です。
しかし、テクノロジーの激しい発展がこれからも続いていくことだけは明確です。
だからこそ、今のうちにOODAを取り入れておけば、長期目線で考えた時に、より強いチーム作りに役立つ可能性が高いでしょう。
ぜひ本記事の内容を参考に、OODAの導入を検討してみてください。
SHARE この記事を友達におしえる!