最近話題のアウトソーシングって何?メリット・デメリットを企業側&働く側視点で解説
はじめに
近年では、社内のコスト削減や生産性向上の面からアウトソーシングを活用する企業が増加傾向にあります。
アウトソーシングを活用すればプロダクトの質が上がり、企業価値を高める大きな一手にもなるでしょう。
また、アウトソーシングで働く側にもメリットがあります。
レベルの高い組織で技術を磨き続けたり、高い対価を得られたりするため、キャリアアップ思考の方にも人気です。
今回はそんなアウトソーシングについて、企業側・働く側視点でのメリットとデメリットを網羅的に解説しています。
アウトソーシング活用を検討している企業も、これから転職をしてアウトソーシングで働きたい人も、総合的な視点から精査してみてください。
アウトソーシングとは
アウトソーシングとは、社外へ業務の一部を委託する手法の事です。
委託できる業務は委託先によって得意分野が異なりますが、多岐に渡ります。
元々は設備費・運用費が比較的かかる情報分野で主に使われていましたが、現在では様々な業務を専門にアウトソーシングを請け負う会社が多くあります。
委託例としては、広告制作、情報処理、勤怠管理などが挙げられます。
外部委託することによって社内で処理するべき業務が減り、コスト削減やリソースの有効活用が期待できます。
アウトソーシングと人材派遣との違い
アウトソーシングとよく混同される雇用形態が、「人材派遣」です。
いずれも自社から他社へ出向する形で勤務する雇用形態なので、一見すると大きな違いはありません。
しかし、働き方や対価、対象の業種がはっきり分かれてきます。
ここでは、アウトソーシングと人材派遣の主な違いを3つご紹介します、
雇用形態が違う
まず違うのが雇用形態。人材派遣は文字通り派遣社員という非正規雇用での就業ですが、アウトソーシングは正社員です。
さらに、働き方も異なります。
人材派遣は、派遣会社に登録をした人材を派遣先企業に紹介する形。紹介された企業は派遣社員を自社の対象部署に配置して業務を与えます。
しかしアウトソーシングは大元の会社に所属していながら、取引先企業の一部の業務を担う役割を持ちます。
例えばIT技術者だとしたら、派遣社員はフルタイムでその企業の仕事を行いますが、アウトソーシングはプロジェクトの一部を担当するイメージです。
アウトソーシングは即戦力として対象のプロジェクトに参画することが一般的なので、派遣社員よりも高度なスキルが求められるとも言えるでしょう。
対価が違う
人材派遣とアウトソーシングでは、対価を支払う対象も異なります。
人材派遣は労働者に時給や月給で決まった給与を支給する形。最初に雇用契約を結んだ際に決めた報酬をもらう形なので、形式的には正社員と変わりません。
しかし、アウトソーシング は業務や成果に対して対価を支払う形です。
アウトソーシングを提供する元の企業と提供される企業側で、「このプロジェクトに対して、この金額を支払います」という契約を締結する形で決まります。
簡単にいうと、アウトソーシングは「人材」や「技術」をBtoB間で提供して成り立つビジネスというわけです。
業種が違う
人材派遣とアウトソーシングでは、携わる業種にも違いがあります。
人材派遣は一般事務から接客業、工場のライン作業に至るまで様々な業種を網羅しており、未経験から働ける仕事が多くあります。
しかし、アウトソーシングは主に技術を使う業種が大半を占め、一定のスキルがなければ業務を担うことはできません。
例えばSEやプログラマーなどのITエンジニア、理化学メーカーの研究職など。
これらは前提として経験があることが求められます。
よって、これまで専門的な分野に精通していなければ務まりません。
アウトソーシングは、ルーティーン化していたりノウハウの蓄積が重要視されない業務が中心です。
さらに、社内では対応が難しい専門的な業務や時間や労力の負荷が大きい業務に向いていると言えるでしょう。
アウトソーシングが注目される背景
1つに国際市場で競争力をつけるためという事が挙げられます。
今までは国内市場のみをターゲットにしていた企業も国際市場に目を向ける必要が出てきました。
新しい戦略を練る必要が出てきましたが、社内のリソースだけでは足りないというケースに陥ってしまうことが多くあるでしょう。
アウトソーシングを活用し、社内ではより優先順位の高い新規戦略事業に集中する事ができるようになります。
2つ目に、少子高齢化の影響が挙げられます。
少子高齢化に伴い、労働人口が減少し人的リソースが限られるようになりました。
そのため、人材不足による業務停滞を防ぐためにアウトソーシングを行う企業が増えました。
アウトソーシングのメリット
アウトソーシングのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、企業側の観点から3つに絞って紹介します。
人件費の抑制
日本には年功序列の風習があり、簡単な業務をしているだけなのに年齢が高いだけで給料が高くなってしまうというケースが多く発生します。
必ずしも社内でこなす必要のない業務はアウトソーシングを活用することで人件費の削減を図ることができます。
例えば、比較的アウトソーシングを活用しやすい事務作業を委託することで事務担当者の残業代の削減にも繋がります。
コア・コンピタンスの強化
コア・コンピタンスとはその企業において中核となる強みを意味します。
その強みとは独自性の高い技術力やノウハウ、能力のことを指します。そしてコア・コンピタンスを強化するためには多くの人的リソースが必要になります。
しかし、現代では労働人口の減少により、全ての業務に最大限のリソースを投入することは不可能です。
そこで、マニュアル化している業務やルーティン業務をアウトソーシングする事で、リソースに余裕ができます。
その結果、多くのリソースをよりコアな業務に充てることができるのです。
業務処理速度と品質の向上
アウトソーシングの活用によって、業務処理速度と製品の質を向上することができます。
アウトソーシング委託業者の多くは、様々な分野の専門性に長けており、高い技術力やノウハウを持ち合わせています。
さらに、多くのクライアントへ対応し、競争力を強化していくために常に最新の技術や知識も兼ね備えているでしょう。
専門業者にアウトソーシングすることによって、生産性向上や製品・サービスの向上も期待できるでしょう。
アウトソーシングのデメリット
先述したメリットとは反対にアウトソーシングのデメリットを紹介していきます。
こちらも企業側観点からお伝えします。
ガバナンス弱体化
ガバナンスとは、統治・管理・支配を意味する言葉で、ここでは不正防止や体制管理のために業務内容を細かく把握することを指します。
アウトソーシングでは業務は委託先企業で行われるため、業務工程に目が行き届かなくなります。
これによって、品質管理や業務効率化において厳密な管理は難しくなってしまいます。
ガバナンス弱体化を防ぐためにもコミュニケーションを円滑にかつ頻繁に取れるようなアウトソーシング先を選ぶことが重要です。
従業員の業務能力の幅が狭まる
アウトソーシングによって社内で社員により行われる業務が少なくなってしまいます。
これによって、社員が自らできる業務の種類が制限されてしまい、業務を通して得られる能力の幅も狭まってしまうでしょう。
また社内にノウハウが蓄積されなくなってしまうことから、いざアウトソーシング先のサービス停止や倒産の際に社内で知識のある人がいないと業務停滞に陥ってしまいます。
この事態を避けるためにも委託先との情報共有や社内の人材育成をかかさないことが大切です。
自社の採用ノウハウの質が低くなる
アウトソーシングは取引先企業さえ固定していれば、欲しいタイミングで適切な人材を提供してもらうことができます。
そのため、採用や人材配置を外部に任せっきりになってしまうことも想定されます。
いざ中途採用しようとして求人をしても、理想のスキルを持った応募者がおらず、慢性的な人手不足に悩むこともあるでしょう。
仮に採用できても、想定していたスキルと本人の力量に乖離があって、ミスマッチを感じることもあります。
採用できないがゆえにアウトソーシングに頼ることは間違ってはいません。
しかし、企業にとって人材を直接雇用することは、企業価値を数年数十年先まで守り続けることに等しいものです。
自社の理念やビジョンを理解してくれる人材を採用し、長い期間をかけて成長し活躍できるまで育成することは、経営を安定する上でも重要なプロセスなのです。
アウトソーシングの種類
アウトソーシングと一口で言っても様々な種類があります。
ここでは主に3つの種類を解説します。
BPO (business process outsourcing)
BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略を表し、業務設計・効果分析・改善案の実行などを一括して外部業者に一括委託する方法を指します。
委託先や契約内容によって異なりますが、勤怠管理・面接システム・社員研修などの人事業務や営業業務もBPOの対象です。
例えば、テレアポ業務専門の会社に外部委託すれば、電話対応業務は外部に任せてその他の優先順位の高い業務に集中できるなどのメリットがあります。
ITO (IT outsourcing)
ITOとはインフォメーション・テクノロジー・アウトソーシングの略で、主にホームページの保守や運用、IT戦略の策定やサーバー管理などの企業の情報システムに関する業務を一括で委託する種類になります。
情報システム処理には専門性の高い技術が求められ、業界によっては社内で処理するには難しいという企業も多いです。
ITOを活用することで非IT企業が社内で処理するよりも早く、正確に処理が可能になります。
KPO (knowledge process outsourcing)
KPOとはナレッジ・プロセス・アウトソーシングの略で、主にデータの収集や加工、情報の分析を中心とした専門知識が必要な知的業務の委託を意味します。
例えば、規則性が少なく判断領域が多いため、専門知識がないと難しいと言われているデータを扱う業務の処理に役立ちます。
データに基づいて現状を把握し、企業の課題や問題点を分析してもらい、それに対する改善策を見つける事で業績向上などが期待できます。
アウトソーシング会社で働くメリット
ここからは、働く側視点からアウトソーシングのメリットをご紹介します。
アウトソーシングのビジネスはBtoB間で成り立ちます。
そのため、提供先企業にとって、アウトソーシング人材は質の良いプロダクトというわけです。
そのため高度なレベルが求められることが前提ですが、それさえクリアできれば働く側が得られる恩恵は将来的にも価値の高いものです。
そのメリットは大きく分けて3つあるので、詳しくみていきましょう。
収入アップが見込める
アウトソーシングは給与水準が高い傾向にあります。
時給制なら時給2,000円以上も多く、月給制なら基本給30万円以上の案件も豊富です。
IT技術者などは労働時間に縛られることなく、案件納期ごとにタスク管理ができるため、高収入ながら快適なワークライフバランスを送ることができるでしょう。
高度なスキルが備わっていることが前提の契約だからこそ、対価として高い報酬を与えているというわけです。
短期間で多岐にわたるプロジェクトに携われる
アウトソーシングは案件ごとにプロジェクトを任せられることが多いため、短期間で様々な業務に携わることができます。
例えばアプリ開発系の技術者なら、数ヶ月ゲームの案件に携わった後、法人向けの業務効率化アプリの開発に携わるなど。
技術さえ一つでも持っていれば、どんな業界の案件も携われるため、短期間で多くの知識を蓄積することもできます。
フリーランスなどで独立しやすい
先述した通り、アウトソーシングは短期間で多岐にわたる業務に携わります。
そのため、蓄積されたノウハウを活かしてフリーランスや個人事業主として独立しやすくなります。
独立して個人で働く場合、今まで以上に高いスキルを求められます。
少ない知識を持って市場に出ても、なかなか契約に至らないことは多くあります。
アウトソーシングで高度なスキルを様々な業界で役立ててきた経験は、市場価値が高い人材であることの証明と言えるでしょう。
アウトソーシングで働くのが難しいと言われる理由
アウトソーシング未経験の人の多くは、アウトソーシングで働くことに高いハードルを感じてしまいます。
「スキルが足りないのではないか」「安定的な雇用が保証されないのではないか」
ここからは、その難しさの主な理由を3つご紹介します。
一定基準のスキルを満たす必要がある
アウトソーシングに求められるスキルレベルは、正社員や派遣社員よりも高いと言われています。
なぜなら、就業した初日からすぐにそのプロジェクトに携わらなければならないためです。
研修やOJTに時間をかけることはほぼありません。
そのため、就業する段階で企業が求める一定基準以上のスキルを満たしている必要があります。
アウトソーシング会社に登録をすると、スキルテストを受けるのが一般的です。
自分のスキルに見合った案件を紹介される形なので、スキルの程度によっては希望している条件で働けないことも想定すべきでしょう。
終身雇用ではない
アウトソーシングの人材は短期プロジェクトごとに配置されるため、終身雇用ではありません。
一つのプロジェクトが終わったら次のプロジェクトを紹介されることが一般的ですが、契約期限によっては支援がなくなることも想定されるので注意が必要です。
もちろん高度なスキルを持っている人材なら、就業支援がなくなったところで転職先は山ほどあるのが当然ですが、それでも方向性が決まるまでは多少の不安を抱えることでしょう。
納期がタイトかつ仕事量が多い
アウトソーシング人材は、契約後すぐに一つのプロジェクトの決まった業務を任せられます。
そのプロジェクトには納期が設定されているので、これを超えるのは御法度。
そのため、タイトなスケジュールの間でかなりのボリュームの仕事をこなさなければならないこともあります。
納期は厳守なので、案件全体の進捗具合によっては長時間労働を覚悟しなければならないでしょう。
正社員のようにルーチン化された働き方ではないため自由度は高いですが、その分日によっては負荷が大きくなります。
まとめ
少しでもアウトソーシングの概要が掴めたでしょうか。
アウトソーシング人材を活用する企業は、今後も増加していくと考えられています。
企業側はデメリットも理解しつつ適切なタイミングで活用し、働く側は責任感を持ってスキルを向上させ続けることを前提として価値を高めていきましょう。
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